ロイス・ディーツ症候群の1歳児への自己弁温存大動脈基部置換術に成功
慶應義塾大学は8月6日、ロイス・ディーツ症候群を基礎疾患に持つ1歳児(体重6.8kg)が発症した大動脈弁輪拡張症および重度の大動脈弁閉鎖不全症に対し、国内最年少(同大学調べ)で患者自身の大動脈弁を温存する大動脈基部置換術(デービッド手術)を実施し、成功したと発表しました。
ロイス・ディーツ症候群は、全身の血管や骨、皮膚などを支える結合組織に異常を来す稀な遺伝性疾患です。TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)のシグナル伝達に関わる遺伝子の変異が原因で、乳幼児期から大動脈が拡張しやすく、大動脈瘤や大動脈解離などの血管病変を若年で発症する恐れがあります。また、心血管病変のほか、特徴的な顔貌や骨格異常、関節の過可動性、口蓋裂などを伴うこともあります。
今回手術を受けたのは、1,157gの低体重で出生し、生後早期にロイス・ディーツ症候群と診断された体重6.8kgの1歳児です。患者さんは1歳頃までに大動脈弁輪拡張が急速に進み、重度の大動脈弁閉鎖不全症へと進行して心不全症状が現れたため、外科治療が必要と判断されました。
今回、慶應義塾大学の小児循環器グループが、多職種による術前評価を行い、デービッド手術を実施しました。手術は成功し、患者の自己弁機能は良好に維持されて退院に至りました。

乳幼児に対する大動脈基部手術は技術的難易度が非常に高く、従来は人工弁を用いることがありました。しかし人工弁では、生涯にわたり抗凝固薬を内服する必要があるほか、成長に伴うサイズ不適合や再手術のリスクといった多くの課題があります。デービッド手術では自己弁を温存するため、これらの課題を回避しながら根治的な治療が可能となります。
以上の研究成果により、これまで治療の選択肢が限られていた乳幼児の重症大動脈基部疾患に対する積極的な外科治療戦略が提示され、小児心臓外科学や先天性心疾患診療の発展に大きく寄与することが期待されるとしています。
