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脊髄小脳失調症の治療法開発へ一歩前進

熊本大学をはじめとする研究グループは、細胞内でタンパク質を分解するメカニズムの1つであるシャペロン介在性オートファジー (CMA) の機能を小脳でのみ低下させたマウスを作成しました。このモデルマウスは脊髄小脳変性症 (SCD 指定難病 18) の一種である脊髄小脳失調症 (SCA) の病態解明や新規治療法の開発に繋がると期待されています。

背景-小脳の神経が変性する遺伝性の難病

脊髄小脳変性症 (SCD) は小脳を中心とした神経の障害 (変性) により発症する疾患で、歩行時のふらつきや、ろれつが回らなくなるなど運動障害が見られます。SCDのうち一部は遺伝性疾患であることが明らかになっています。遺伝性のSCDは脊髄小脳失調症 (SCA) と呼ばれ、これまでに複数種類のSCAが見つかっています。小脳の失調を引き起こす原因は解明されていないことも多く、根本的な治療法がまだありません。オートファジーは細胞に備わっている機能のひとつで、不必要なタンパク質や誤って作られたタンパク質を分解し掃除する働きがあります。近年シャペロン介在性オートファジー (CMA) の活性がパーキンソン病の発症に関与していることが報告されており、CMAと神経変性疾患の関連に着目されています。そこで研究グループは遺伝子改変技術を用いて、CMAの活性を低下したマウスを作成しました。

結果と展望-CMA活性と小脳機能の関連性

このマウスは、CMAに関わる特定のタンパク質の働きを消失させる遺伝子を神経細胞にのみ組み込めるアデノ随伴ウイルスベクター (AVVベクター) により作出されました。このマウスを観察した結果、進行性の運動障害を示すことが明らかになりました。加えて、小脳皮質の萎縮を伴う神経の脱落、およびアストロサイトなどのグリア細胞の活性化を示しました。進行性の運動障害や小脳皮質の萎縮は、実際のSCA患者にもみられる所見です。本研究結果より小脳神経細胞におけるCMAの活性低下はSCAの発症に関わる重要なメカニズムであることが示唆されました。 近年、SCAは遺伝子診断も可能になってきています。 今回の様な研究の発展により、SCAに対する新規の治療法開発のみでなく予防法の開発にも繋がると期待されています。

出典元
熊本大学 お知らせ(生命科学系)

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