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皮膚難病・表皮水疱症に新たな治療選択肢「アロステムシート」発売、専門医と患者さんが語る期待と課題

イシンファーマ株式会社は7月27日、表皮水疱症の新たな治療薬「アロステムシート(一般名:ニバドストロセル)」の発売に伴うメディアセミナーを開催しました。

同セミナーでは、北海道大学大学院医学研究院 皮膚科学教室 教授 氏家英之先生が疾患の実態やアンメットニーズについて、東邦大学医学部皮膚科学 表皮水疱症再生治療学講座 教授 石河晃先生が新薬の特徴と臨床試験の結果について解説。

さらに、自身も表皮水疱症の患者であり、NPO法人表皮水疱症友の会 DebRA Japanの代表理事を務める宮本恵子さんが講演を行い、新薬への期待や、難病を取り巻く社会的な課題について共有しました。

皮膚に水疱やびらんを繰り返す「表皮水疱症」の実態

表皮水疱症は、日常の軽微な刺激や摩擦によって、全身に水疱やびらんを繰り返し生じる遺伝性の皮膚疾患で、指定難病にも認定されています。この疾患は、皮膚の表皮と真皮をつなぎとめる役割を担うタンパク質を作る遺伝子に、生まれつきの変異があるために起こると考えられています。

表皮水疱症は主に、単純型、接合部型、栄養障害型、キンドラー型という4つの病型に分けられますが、もっとも患者数が多いものが「栄養障害型」です。氏家先生は、この栄養障害型について、広範囲の水疱やびらんに加えて、強いかゆみや、手指が癒合して棒状になる症状、慢性潰瘍からの皮膚がんの発症、食道の癒着や狭窄による栄養障害などを引き起こす場合があることを説明しました。

さらに、表皮水疱症の治療について、近年では自家培養表皮の移植や遺伝子治療など、新しく保険適用となった治療法が登場していることを紹介しました。一方で、それぞれの治療法には適用範囲や効果の持続性などの課題があるとしたうえで、今回発売されたアロステムシートについて「患者さんの生活の質(QOL)の向上に対して大きな力になるのではないか」と期待を寄せました。

氏家英之先生(提供写真)

難治性または再発性のびらん・潰瘍を対象とした「アロステムシート」の特徴

続く講演では、石河先生が新薬「アロステムシート」の特徴と臨床試験の結果について発表しました。

アロステムシートは、栄養障害型、接合部型および単純型(重症汎発型に限る)の表皮水疱症に伴う難治性または再発性のびらん・潰瘍部を対象としたシート状の再生医療等製品です。石河先生は「ヒトの脂肪由来間葉系幹細胞を含有するシート状の製剤で、びらん・潰瘍部に貼付することで、VEGFやHGFなどの成長因子による血管新生や抗炎症作用、欠損タンパク質の供給を目指して開発された製剤」であると紹介しました。

国内第3相試験の結果にも触れ、週1回最大12回の貼付によって、治療終了直後に潰瘍面積が平均して半分以下(-54.2%)に縮小したことが確認されたと共有しました。また、潰瘍面積が50%縮小するまでの期間の中央値は17.5日であり、痛みやかゆみのスコアにおいても有意な改善が見られたことを報告し、「一定期間とはいえ、良好な状態を保つことが期待できる治療が実用化されたことは非常に意義深い」と強調しました。

石河晃先生(提供写真)

さらに、氏家先生より同試験の安全性結果と今後の調査方針について説明がありました。試験参加者6例中4例で発熱や口内炎、皮膚感染などの有害事象が報告されましたが、同シートとの因果関係を否定できないものとして挙げられたのは、1例で認められたCRP(炎症の有無を調べる指標)の上昇だったといいます。ただし、表皮水疱症ではびらんや潰瘍に伴いCRPが高値となることもあり、シート貼付との関連を判断することは難しい点も説明されました。

なお、希少疾患で治験参加者数が限られていたことから、承認条件として今後5年間、使用患者を対象とした全例調査が行われ、安全性・有効性の確認が続けられることも補足されました。

診断までの長い道のり、そして支援体制の構築へ――患者さんが語る課題と希望

患者会代表の宮本さんは、当事者としての体験と、これまでの患者会の歩みを語りました。生まれたときから水疱やびらんを繰り返しながらも、表皮水疱症の診断を受ける機会がないまま過ごしていたという宮本さん。軽い摩擦で水疱ができ、手足の指が癒着していく中、食道の障害によって食事が困難になるなど、過酷な経験を振り返りました。

宮本恵子さん(提供写真)

転機となったのは44歳の時だったといいます。病院を転々とした末に、北海道大学病院の皮膚科で専門医と出会い、初めて表皮水疱症の確定診断を受けたのです。医師からの「一緒に治療していきましょう」という言葉に、驚きとともに救われた思いだったと語りました。

その後、海外の患者さんとの交流を機に「自分たちも声をあげなきゃいけない」と奮起し、署名活動などを通じて、ガーゼなどの皮膚材料や衛生材料の保険適用につながった患者会の活動について紹介しました。今年度の診療報酬改定では、長年要望してきた訪問看護の回数制限の緩和も実現したといいます。

一方で、社会制度にはまだ多くの課題が残されていると指摘。例えば、処方される大量のガーゼなどについて、「皮膚症状がある中で、自分ひとりでは持って帰れない」と日常的な負担を訴えました。さらに、重度の症状があるにもかかわらず「身体障害の認定項目に皮膚症状単独の項目がない」ことにも触れ、制度の隙間に置かれている現状に強い懸念を示しました。こうした課題を解決するため、宮本さんは、海外にあるような、医療機関、患者、地域をつなぐ包括的な相談ネットワーク施設「EB(表皮水疱症)ハウス」の日本での設立を目指していることを共有しました。

最後に、表皮水疱症の世界的シンボルである「蝶」に触れ、「蝶のように脆い皮膚を持つ表皮水疱症の子どもたちに、どんなことがあっても生きていこうとする勇気と希望を伝えたいし、皆さんにも知っていただきたい」と締めくくりました。

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