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筋萎縮性側索硬化症においてタンパク質が凝集するメカニズムを解明

名古屋大学を中心とする研究グループは、筋萎縮性側索硬化症(ALS 指定難病2)の病巣においてTDP-43タンパク質が異常凝集するメカニズムを発見したと発表しました。ALS患者の運動神経細胞ではTDP-43と呼ばれるタンパク質が凝集体を形成することが知られており、運動神経細胞死に繋がる原因であると考えられていますが、その原因は不明でした。

背景-ALS患者に見られるTDP-43の異常凝集

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経が徐々に障害され、手足やのどの筋肉が徐々に痩せていく進行性の神経難病であり、国内には約10,000人の患者がいると推定されています。発症から数年以内に人工呼吸器が必要になる場合も多いです。ALSの病巣に特徴的な異常として、TDP-43タンパク質の凝集がみられます。TDP-43は神経細胞にとって非常に重要な役割を持っており、通常は細胞核内に存在していますがALSでは細胞質内へ漏出し凝集することが明らかになっています。ALS患者では普遍的にTDP-43の凝集が観察されることからALSの病態に強く関連していると考えられていますが、凝集メカニズムは不明でした。一方で、ALS全体の10%を占める遺伝性ALS(家族性ALS)は原因遺伝子がいくつか明らかになっています。そこで本研究チームはALSの原因として既に特定されている20種の遺伝子に目印を付け、どの遺伝子の異常がTDP-43の凝集を引き起こすのかを探索しました。

結果-TDP-43の凝集経路に関わる2経路を発見

研究グループはTDP-43に緑色蛍光タンパク質を組み込んだ培養細胞を作製し、この細胞にALSの原因遺伝子20種に赤色蛍光タンパク質を融合し導入しました。この細胞を観察した結果、ALS原因遺伝子産物は「自分自身とTDP-43を巻き込んで凝集するもの」と「自分自身は凝集するがTDP-43を巻き込まないもの」「自身もTDP-43も凝集しないもの」に分かれることが明らかになりました。さらに「自分自身とTDP-43を巻き込んで凝集するもの」は「微小管に結合するタンパク質(MRP)をコードする遺伝子」と「RNAに結合するタンパク質(RBP)をコードする遺伝子」に分けられました。さらに様々な薬剤でTDP-43の凝集過程を阻害したところ、MRPとRBPはそれぞれ異なるメカニズムでTDP-43の凝集に関わっていることが示唆されました。

出典元
名古屋大学 プレスリリース

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