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潰瘍性大腸炎の病態指標である腸管粘膜透過性の評価法を開発、患者さんの負担軽減に

兵庫医科大学の研究グループと株式会社島津製作所は9月13日、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を活用し、色素剤インジゴカルミンの血中濃度から、潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の病態の指標である腸管粘膜透過性を評価する手法を開発したと発表しました。

潰瘍性大腸炎(指定難病97、UC)は、大腸の粘膜に炎症が起こることにより、びらんや潰瘍ができる炎症性腸疾患で、下痢・血便・腹痛などの症状が現れる疾患で、ます。国内患者数は約20万人とされています。また、過敏性腸疾患症候群の国内潜在患者数は人口の約10%の1,200万人といわれています。

潰瘍性大腸炎の原因は明確にはなっていませんが、腸バリア機能障害による腸管粘膜透過性の高まりで生じる「腸もれ(Leaky Gut)」が一因と考えられています。腸もれによって消化中の食品抗原や腸内細菌およびその生成物が体内に侵入して発症するとみられているものの、生きた人体における粘膜透過性の定量的な評価手法はこれまでなく、疾患機構と病態解明の研究は進んでいませんでした。

これまで、糖類の内服後に尿に排泄される濃度を測定して粘膜透過性を評価するラクツロース・マンニトール法で粘膜透過性の評価をおこなってきいましたが、この方法では1日分の蓄尿が必要で、被験者の負担が大きく、消化管運動や食事、腎機能が測定値に影響を及ぼすことなどが問題点として挙げられていました。

今回、研究グループは、「内視鏡検査で用いたインジゴカルミンが検査後、尿中に排出される」という現象に着目して、この色素剤を用いた粘膜透過性評価法を検討しました。検査でインジゴカルミン散布後にその血中濃度を潰瘍性大腸炎患者さん11名と健常者5名について病態との関連を評価した結果、両グループで濃度に有意な差が見られ、本手法の有用性が示唆されました。インジゴカルミンの血中濃度測定には液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」が用いられました。

従来、潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の治療では、薬の投与後の自覚症状で治療効果を測ってきました。今回の開発により、患者さんの負担軽減に加えて、病態の定量的な評価を実現して、原因究明や治療法開発への貢献が期待されます。

兵庫医科大学はプレスリリースにて、「今後、本学は島津製作所と協力して本手法の臨床的エビデンスの取得を進め、創薬研究を支援する研究用機器の開発や臨床検査に使用できる医療機器の開発を目指します」と述べています。

なお、本研究成果は、兵庫医科大学と島津製作所が連携し、2019年に開設した産学連携講座「疾患オミクス解析講座」で開発され、第49回医用マススペクトル学会にて発表されました。

出典
兵庫医科大学 プレスリリース

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