かいようせいだいちょうえん潰瘍性大腸炎ulcerative colitis
指定難病97
潰瘍性大腸炎
実施中の治験/臨床試験
クローリングニュース
- 男子100mの桐生祥秀、復帰3走目は10秒52「復活近い」豪州選手権決勝 …
- 難病の『潰瘍性大腸炎』からの復帰戦に挑む重永亜斗夢「楽しみの …
- 国内男子ツアーいよいよ開幕 重永亜斗夢、療養から1年振りの …
- オンボー、活動期潰瘍性大腸炎の治療薬として承認-リリーと持田 …
- 子供の病気/その他の子供に多い病気
- エンタイビオ皮下注、活動期潰瘍性大腸炎の維持療法として国内で …
- 潰瘍性大腸炎薬「オンボー」が承認取得 リリー供給、持田は販売 …
- 桐生祥秀が100mで10秒48 288日ぶり復帰、最下位も第一歩 昨年9月には …
- 桐生祥秀が100mで10秒48 288日ぶり競技会復帰、昨年9月には「潰瘍性大 …
- 《難病と向き合う 増える炎症性腸疾患》2 重症者と家族 全摘後も …
- 山田まりや難病だった? クローン病の症状・治療法
- 難病を抱えながらもオリンピック出場を目指すスイマー 「病気だ …
- 桐生祥秀25日オーストラリアの大会で復帰 男子100mエントリー 22年6 …
- 桐生、25日に実戦復帰へ 豪州大会の100メートルで―陸上男子
- 安倍総理も悩まされた潰瘍性大腸炎の症状・治療法
- ご報告・28歳、潰瘍性大腸炎になって見えた世界 『食べることと …
- 【国内患者20万以上】「潰瘍性大腸炎」治療の未来 【持病を生きる …
- 潰瘍性大腸炎で下痢や腹痛、血便が…。潰瘍性大腸炎を医師が解説
- 潰瘍性大腸炎・クローン病
- 潰瘍性大腸炎のストックイラスト素材
病気・治療解説
潰瘍性大腸炎の理解に必要な情報
【消化管とは】
私たちはものを食べ、水分を補給することで、生命を維持するために必要なエネルギーやからだをつくるために必要な原料を得ています。このように食物を体内に取り込み、消化、吸収し、最終的には不要物を排泄するまでの役割をになう器官が消化器です。消化器は、胃や腸はもちろん、食物を取り込む口(口腔)や栄養素を貯蔵・加工する肝臓なども消化器に含まれます。消化器のうち、食物や水分の通り道となる部分が消化管です。
消化管は口腔にはじまり、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)大腸、肛門までを指し、全長は約6mです。食物はこの消化管を通り、消化・吸収され、やがて流動体の残りかす(不要物)が大腸で糞便となり、排泄されます。
【消化管の働き】
1)口:食物が口内で咀嚼される間に、唾液と混ざり、唾液アミラーゼにより、デンプンの消化が始まります。
2)食道、胃、十二指腸:食物は食道を通過し胃に到達すると、一旦胃内に貯留し撹拌され、胃液中の酵素や酸によってタンパク質の消化が始まります。
3)小腸:胃で撹拌された食物は十二指腸に流れ込み、そこで膵液や胆汁と混ざり、さらに各種酵素の消化作用を受けつつ、小腸内を移動していきます。この移動の間に各種栄養素が吸収されます。
4)大腸:大腸では水と電解質が吸収され、消化吸収されなかったものや老廃物を肛門まで運搬します。
概要
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。この病気は病変の拡がりや経過などにより下記のように分類されます。
1)病変の拡がりによる分類:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎
2)病期の分類:活動期、寛解期
3)重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症
4)臨床経過による分類:再燃寛解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型
罹患数
わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は166,060人(平成25年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)、人口10万人あたり100人程度であり、米国の半分以下です。
医療受給者証交付件数の推移(合計)
統計
発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性別に差はありません。喫煙をする人はしない人と比べて発病しにくいと言われています。
原因
原因は明らかになっていません。これまでに腸内細菌の関与や本来は外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられていますが、まだ原因は不明です。
遺伝
潰瘍性大腸炎は家族内での発症も認められており、何らかの遺伝的因子が関与していると考えられています。欧米では患者さんの約20%に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎あるいはクローン病)の近親者がいると報告されています。近年、世界中の研究者によりこの病気の原因を含めた特異的な遺伝子の探索が続けられていますが、現時点では遺伝に関する明解な回答は得られていません。遺伝的要因と食生活などの環境要因などが複雑に絡み合って発病するものと考えられています。
症状
下痢(便が軟らかくなって、回数が増えること)や血便が認められます。痙攣性または持続的な腹痛を伴うこともあります。重症になると、発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。また、腸管以外の合併症として、皮膚の症状、関節や眼の症状が出現することもあります。
診断
潰瘍性大腸炎の診断は症状の経過と病歴などを聴取することから始まります。最初に、血性下痢を引き起こす感染症と区別することが必要です。下痢の原因となる細菌や他の感染症を検査し、鑑別診断が行われます。その後、患者さんは一般的にX線や内視鏡による大腸検査を受けます。この検査で炎症や潰瘍がどのような形態で、大腸のどの範囲まで及んでいるかを調べます。さらに”生検”と呼ばれる大腸粘膜の一部を採取することで、病理診断を行います。潰瘍性大腸炎は、このようにして類似した症状を呈する他の大腸疾患と鑑別され、確定診断されます。
治療法
原則的には薬による内科的治療が行われます。しかし、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。
内科的治療
現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、腸の炎症を抑える有効な薬物治療は存在します。治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールすることです。
潰瘍性大腸炎の内科的治療には主に以下のものがあります。
・〈5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬〉
5-ASA製薬には従来からのサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)と、その副作用を軽減するために開発された改良新薬のメサラジン(ペンタサやアサコール)があります。経口や直腸から投与され、持続する炎症を抑えます。炎症を抑えることで、下痢、下血、腹痛などの症状は著しく減少します。5-ASA製薬は軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、再燃予防にも効果があります。
・〈副腎皮質ステロイド薬〉
代表的な薬剤としてプレドニゾロン(プレドニン)があります。経口や直腸からあるいは経静脈的に投与されます。この薬剤は中等症から重症の患者さんに用いられ、強力に炎症を抑えますが、再燃を予防する効果は認められていません。
・〈血球成分除去療法〉
薬物療法ではありませんが、血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法で、LCAP(白血球除去療法:セルソーバ)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム)があります。副腎皮質ステロイド薬で効果が得られない患者さんの活動期の治療に用いられます。
・〈免疫調節薬または抑制薬〉
アザチオプリン(イムラン、アザニン)や6-メルカプトプリン(ロイケリン)(未承認)はステロイド薬を中止すると悪化してしまう患者さんに有効です。また、シクロスポリン(サンディミュン)(未承認)やタクロリムス(プログラフ)はステロイド薬が無効の患者さんに用いられます。
・〈抗TNFα受容体拮抗薬〉
インフリキシマブ(レミケード)やアダリムマブ(ヒュミラ)といった注射薬が使用されます。効果が認められた場合は、前者は8週ごとの点滴投与、後者では、2週ごとの皮下投与が行われます。後者では自己注射も可能です。
外科的治療
多くの場合、内科治療で症状が改善しますが、以下のようなケースでは外科手術(大腸全摘術)が行われます。
(1)内科治療が無効な場合(特に重症例)
(2)副作用などで内科治療が行えない場合
(3)大量の出血
(4)穿孔(大腸に穴があくこと)
(5)癌またはその疑い
大腸全摘術の際には、小腸で人工肛門を作る場合もありますが、近年では、小腸で便をためる袋(回腸嚢)を作成して肛門につなぐ手術が主流となっています。その場合、術後は普通の人とほぼ同様の生活を送ることができます。
経過
多くの患者さんでは症状の改善や消失(寛解)が認められますが、再発する場合も多く、寛解を維持するために継続的な内科治療が必要です。また、あらゆる内科治療で寛解とならずに手術が必要となる患者さんもいます。また、発病して7-8年すると大腸癌を合併する患者さんが出てきますので、そのような患者さんでは、症状がなくても定期的な内視鏡検査が必要になります。しかし、実際に、一生のうちに大腸癌を合併する患者さんはごく一部です。重症で外科手術になる患者さんなど一部の患者さんを除けば、ほとんどの患者さんの生命予後は健常人と同等です。
関連リンク
※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。