筋ジストロフィーの筋萎縮を抑制し筋再生を促進する血中RNAを同定
国立精神・神経医療研究センター神経研究所の研究グループは血中RNAの中から、筋肉の再生を促進し筋肉の萎縮を抑制するマイクロRNAを発見したと発表しました。発見されたマイクロRNAを筋ジストロフィーのモデルマウスに人為的に供給したところ、マウスの筋力が改善されました。
近年は老化に対する関心が高く、アンチエイジングなどが注目されています。パラバイオーシスと呼ばれる実験は2匹の動物の血管を結合する実験法があり、若いネズミと老いたネズミを結合し同一の血液循環系にすると、若いネズミは老化し老いたネズミは若返ることが知られています。そのため、血液中には老化促進やアンチエイジング効果のある因子の存在が示唆されます。本研究グループは血液中のマイクロRNAに着目し、血液中のRNAと老化の関連性を調べました。
若いマウスと老いたマウスの血中マイクロRNAを比較すると多くのマイクロRNA量が変化しており、筋肉に存在するマイクロRNAがいくつか見つかりました。そこで、マウスの筋芽細胞株(C2C12細胞)に対し、見つかったマイクロRNAを導入し解析すると、マイクロRNA199-3p(miR199-3p)に強い筋分化誘導能が見出されました。miR199-3pはこれまで筋肉における働きがほとんど知られていませんでした。また、miR199-3pが作用する遺伝子としてLin28b遺伝子とSuz12遺伝子が明らかになりました。次に研究グループはmiR199-3pを人為的に誘導可能なmiR199#4合成核酸を筋損傷マウスの損傷部に投与し生体実験を行い、再生した筋線維の断面積が大きくなることが明らかになりました。さらにmiR199#4合成核酸は、筋萎縮しmiR199-3pが減少したマウスへの投与により筋線維を肥大させていました。miR199#4の投与による遺伝子への影響を解析したところ、強く抑制される遺伝子としてAtrogin1とMuRF1遺伝子が同定されました。
筋ジストロフィーのモデル動物であるmdxマウスに対しmiR199#4を全身投与したマウスは対照群と比較し有意に筋力が改善しました。また、筋ジストロフィーの血中で上昇が知られているクレアチンキナーゼも有意に低下したことから、miR-199-3pは筋ジストロフィーモデルマウスの症状改善効果があることが明らかになりました。