ウィズコロナ時代をファブリー病と共に生きるための市民公開講座開催
アミカス・セラピューティクス株式会社は2020年12月16日に、ファブリー病に関するオンライン市民公開講座を開催いたしました。新型コロナウイルス感染症が流行する中におけるファブリー病患者の過ごし方や心のケアについて 新潟大学 成田一衛 先生と、国立精神・神経医療研究センター 金吉晴 先生が講演しました。
「ファブリー病の管理と感染症対策」
成田 一衛 先生 (新潟大学大学院医歯学総合研究所 腎研究センター 腎・膠原病内科分野 教授)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2は、脂質二重層と外膜タンパク質からなる外膜(エンベロープ)でRNAが囲まれています。ウイルスがヒトの細胞に侵入する際、エンベロープ上に存在するSタンパク質が、ヒト細胞膜上にあるアンジオテンシン変換酵素2受容体へ結合する過程が必要です。アメリカで行われた研究では、高血圧治療薬として処方されるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)はCOVID-19の発症や重症化には影響しないことが明らかになりました。新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化しやすいのは高齢者と基礎疾患のある方です。重症化のリスクとなる基礎疾患には慢性閉塞性肺疾患(COPD)のほか、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患や肥満などがあります。COVID-19によって約17%の患者に急性腎障害(AKI)が起こることが明らかになっています。AKIは予後不良であり、77%は重症になるなど新型コロナウイルスと腎臓疾患の関連も徐々にわかり始めました。さて、ファブリー病と新型コロナウイルス感染症についてですが、ファブリー病の患者は重症化する可能性が高いかもしれないと推定されています。酵素補充療法中のファブリー病患者へのCOVID-19の影響は未だ明らかになっていません。
「コロナ禍に心の健康を保つには」
金 吉晴 先生 (国立精神・神経医療研究センター)
強いストレスがかかる状態にいると、不安やイライラした気持ちが強く出やすくなります。まずは不安な気持ちに自分自身で気付いて「不安になるのも当然だな」と受け止めることで少しずつ不安な気持ちは落ち着いていきます。不安が強すぎて、適切な行動をとるのも難しい場合には感情調整スキルが役に立ちます。不安な気持ちを和らげるために自分自身の感情体験を「身体」「思考」「行動」の3チャンネルに分けて感情を見て見ましょう。
□身体チャンネル
あなたが体で感じていることです。不安が強くなると呼吸が早くなり、心拍数が上がり、汗を書くようになります。そのようなときは集中呼吸法が軽減に役立ちます。植物を眺める、音楽を聴く、アロマの香りを嗅ぐなど五感を使ってリラックスする方法もあります。適度な運動や十分な睡眠などを意識してみましょう。
□思考チャンネル
あなたが自分自身に言っていること、考えていることです。「どうしよう」「この先どうなるのだろう」といった考えです。こうした不安に対しては家の掃除をしたり友人と電話をしたりと、注意をシフトすることが効果的です。さらに、気分が良くなるような前向きなイメージを思い浮かべるのも効果的です。
□行動チャンネル
苦痛に対してあなたが実際に取る行動です。不安が強い時に過食や喧嘩などの行動を取りやすくなります。これらの行動を取る前に、苦痛を軽減できるようにストレスが強くかかる状況から一定期間はなれるタイムアウトが役に立ちます。暴飲暴食などの行動を、ジョギングや洗車、縄跳びなど代わりの行動に置き換えて紛らわす行動も効果的です。
以下の呼吸法や体操も実践してみてください。
○呼吸筋ストレッチ体操(音声あり)
○らったった体操
○呼吸法
また当日は、以前RareS.で実施した【RareS.企画】難病・希少疾患患者さんのオンライン診療(遠隔診療)に関する利用状況調査の結果も紹介されました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。