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第8回「小児の在宅医療を考える会」が開催

2021年3月2日、第8回小児の在宅医療を考える会がオンラインで開催されました。”自治体における小児在宅医療、医療的ケア児・者への取り組み”をテーマに、北九州市と横浜市の医ケア児(者)支援の事例が紹介されました。小児の在宅医療を考える会は「子供たちがより良い医療を受けて充実した生活を過ごせるために」を目的として2018年5月に設立されました。医療従事者と患者さんの自由な交流を目指して活動を続けており、今回が第8回目の実施です。

小児の在宅医療を考える会

「医療的ケア児支援の地域プラットフォームづくりについて」
北九州市保健福祉局健康医療部 地域医療課長 青木穂高様

医ケア児支援者へのヒアリングを通じて医ケア児の所在や受入れ施設が繋がる土台が必要であると感じ、2つのプラットフォーム作りを始めました。1つ目は北九州地域医療的ケア児支援協議会(医ケア協議会)です。市内の基幹病院と支援者、行政、ソーシャルワーカーなどから構成され、地域の医ケア児支援がどうあるべきかを考えていきます。2つ目は北九州地域医療的ケア児支援ネットワーク連絡会(医ケアネットワーク連絡会)です。基幹病院をはじめ診療所や福祉サービス事業所、薬局、医療機器メーカー、電力会社、行政などの70の機関より構成され、実際のケアに当たっているスタッフ同士の繋がりが構築されています。医ケア協議会および医ケアネットワーク連絡会では医療や看護だけでなく災害対策などを含む地域づくりまでを視野に入れ地域共生を目指しています。
上記のプラットフォームをもとに、医療的ケア児約140名分のリストを作成しました。一気にすべてを調査するのは現場や保護者にも負担がかかるため、リストの内容を氏名や住所、関わる医療機関、必要なケアをまとめた基本部分と、保育や就学、レスパイト、送迎などの課題別部分に分け、段階的にリストを作成しました。
作成したリストのうち特に災害時の支援や特別な避難が必要な子を絞り、個別支援計画の立案を目指しました。ここで選ばれた要配慮とされる医ケア児のうちハザードマップにいる児について、まずは予測可能な災害の準備から始めることにしました。例えば台風や豪雨が発生する前にある程度の警戒レベルから非難を始めることで、浸水などの被害を免れることができます。
令和2年度は新型コロナウイルス流行の影響により医ケア協議会と医ケアネットワーク連絡会の取り組みが一時的にストップしていました。しかし一方で関係者の繋がりや医ケア児のリストを作っておいたおかげで、新型コロナウイルス感染症や大型台風への対応ができました。特に消毒用エタノールの配布について、リストを作成していたことで気管切開などをしている世帯に優先的に配布できました。 世の中を変えられるのは当事者と、その支援者からだと思っています。一緒に学びあって頑張っていきましょう。

北九州市「医療的ケアに係る調査」結果について
北九州市「医療的ケアに係る調査(災害)」結果について
北九州市 医療的ケア児在宅レスパイト事業

「自治体による小児在宅医療、医療的ケア児、者への取り組み-横浜市の取り組み-」
横浜市こども青少年局総務部 こども保健医務監 岩田眞実様

人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰の吸引や経管栄養などを必要とする医ケア児の数はここ10年間で約2倍に増えました。2016年6月の児童福祉法の改正により医療的ケア児支援のための体制整備が地方公共団体の努力義務として規定されました。これを受けて2018年より横浜市では横浜市医療的ケア児・者等支援促進事業を開始しました。横浜市子ども青少年局、健康福祉局、医療局、教育委員会事務局の4局と横浜市医師会が協働で実施されます。事業の対象者は横浜市全体で約1,500人程度と推定されています。医療的ケア児等を取り巻く問題として、どこに医ケア児に関する相談をすればよいかわからない、在宅療養への移行支援が不十分、看護やケアの負担などがあります。そこで、医療的ケア児・者等と必要な医療・福祉・教育などの社会資源を繋ぐ役割を持った横浜型医療的ケア児・者等コーディネーターの制度が始まりました。横浜市では医師会訪問看護ステーションの看護師がこれを担っており、国の示すカリキュラムに加え横浜市独自の研修を含んだ433時間ものカリキュラムを受けています。コーディネーターの役割として「多職種が連携した支援体制の構築」「情報の集約や関係機関との調整」「活用可能なデータベースづくり」「地域ごとの支援ネットワークの構築と強化」があります。横浜市では、医療的ケア児・者の支援者の理解とコーディネーターの周知を目的に説明パンフレットを作成しました。さらに、医療的ケア児・者等に対応できる受入れ先や支援者を増やすために「横浜型医療的ケア児・者等支援者養成研修」を開始しました。本研修は国の示すカリキュラムに横浜市独自の座学などを加えた56時間の研修です。コーディネーターの活動を通じて見えてきた問題もあります。まずは、保護者として保育園に児を預けたい一方で、円としては看護師の確保や費用および経験の不足が問題です。こちらは今後支援策が検討されていきます。また、医ケア児の預け先がないことも問題ですがコーディネーターが開拓していくことで解決を図っています。

■質疑応答
当日、時間の関係で答えきれなかった質問です。こちらのリンクからご覧ください。
第8回小児の在宅医療を考える会質問回答

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