日本人を含む東アジア人の潰瘍性大腸炎・クローン病に特徴的な遺伝子多型を解明
京都大学は5月11日、日本人を含む東アジア人の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)に特徴的な80か所の感受性遺伝子を報告し、さらに、欧米人も含めた解析で、320か所の感受性遺伝子を同定したと発表しました。
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患は、大腸および小腸の粘膜に慢性炎症・潰瘍が生じる原因不明の遺伝性疾患で、指定難病に登録されています。炎症性腸疾患の発症原因は、生まれ持った遺伝的要因と、食事や腸内細菌、喫煙といった環境的要因との相互作用だと考えられています。
主に欧米人(白人)を対象とした解析結果では、病気のなりやすさに関与する200か所以上の遺伝子領域(疾患感受性遺伝子)が明らかになっていましたが、人種により遺伝的な背景が異なるため、欧米での解析結果がアジア人にあてはまらないと示唆されてきました。しかしながら、アジア人では、炎症性腸疾患の患者さんが欧米よりも少ないため、これまで大規模な解析が行われず、今回初めて大規模な遺伝子解析が行われました。
今回、研究グループは、遺伝的によく似た背景を持つ1万4千人を超える中国人、韓国人、日本人の炎症性腸疾患患者さんに対して大規模な遺伝子解析を行い、東アジア人での炎症性腸疾患に特徴的な80か所の感受性遺伝子を発見しました。また、欧米人とも合わせた人種横断的な解析では、さらに新規に81か所の遺伝子を発見し、これまで知られていたものと合わせ炎症性腸疾患の感受性遺伝子320か所を明らかにしました。
京都大学はプレスリリースにて「今回の研究結果は、これまでは欧米人のデータをもとに開発が進んでいた治療薬や病気の予想法などが、日本人を含む東アジア人でも活用できるようにするために重要な知見です。遺伝要因がわかることで、新しい治療薬の開発や、個人ごとの病気のなりやすさの予想、病気になったあとの患者さんにあった適切な治療法の予想ができるようになる可能性があります。今後、炎症性腸疾患になりやすい体質や、アジア人に適切な治療法などの解明が進んでいくことが期待されます。」と結論を述べています。
なお、同研究の成果は、学術誌「Nature Genetics」オンライン版に、5月8日付で掲載されました。