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筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の原因となる異常タンパク質の分解を誘導する酵素を同定

東京大学は7月21日、神経細胞内の異常タンパク質凝集の分解を誘導する新たな酵素を同定したと発表しました。また、LONRF2酵素が、筋萎縮性側索硬化症の原因となる変性hnRNPやTDP43タンパク質を選択的にユビキチン化することを見出しました。

筋萎縮性側索硬化症は、主に筋肉を動かし、運動をつかさどる神経が障害を受け、手足・のど・舌などの筋肉が徐々に低下していく神経疾患です。

多くの加齢性疾患は、タンパク質のミスフォールディング(タンパク質が折りたたまれる過程で特定の立体構造をとらず、体内で正しい機能や役割を果たせなくなること)と関連しているといわれています。これまで、ミスフォールドしたタンパク質を特異的にユビキチン化し、分解誘導する酵素はいくつか知られていましたが、神経細胞において神経変性疾患の原因となるミスフォールドタンパク質のユビキチン化・分解誘導酵素については明らかになっていませんでした。

今回、研究グループは、有糸分裂から有糸分裂後へのスイッチのモデルとして老化細胞を用い、Lonrf2遺伝子の発現が老化誘導後に誘導されることを見出しました。次に、Lonrf2ノックアウトマウス(Lonrf2-/-)を作製して解析を実施した結果、発育に異常なしで生まれ、18ヶ月齢まで正常に成長したマウスが、雄雌ともに21ヶ月齢までに、野生のマウスに比較べて、握力の低下やロータロッド試験での運動学習障害などの運動障害を発症し、短命でした。

また、脊髄の免疫組織化学的解析から、Lonrf2-/-マウスのコリンアセチルトランスフェラーゼ陽性神経細胞の数は、生後21ヶ月では野生型と比較して有意に減少し、TDP43凝集体陽性の神経細胞数は増加していました。

これらの結果は、Lonrf2-/-マウスが運動神経変性や、筋萎縮と神経筋接合部欠損を示しています。また、Lonrf2が生体内でTDP-43のようなミスフォールディングタンパク質を分解することが示されました。

特発性筋萎縮性側索硬化症の患者さんの中に、Lonrf2機能不全のバリアント遺伝子を同定しました。そして、筋萎縮性側索硬化症の患者さん由来のiPS細胞から分化誘導した運動神経にLonrf2遺伝子を導入すると、運動神経の異常が改善することが明らかになりました。

画像はリリースより

東京大学は今回の研究成果をふまえて「今回の研究結果は、LONRF2がALSなどの神経変性疾患の発症に関わっている可能性を示唆しており、今後Lonrf2を用いた全く新しい革新的な神経変性疾患治療法に有用であると考えられます」と今後の展望を述べています。

なお、同研究は、金沢大学、慶応義塾大学との共同研究であり、研究成果は、国際科学誌「Nature Aging」オンライン版に7月20日付で掲載されました。

出典
東京大学 プレスリリース

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