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免疫性血小板減少症(ITP)に初のBTK阻害薬「ウェイリズ」承認、患者さんのQOL改善に期待

サノフィ株式会社は8月5日、免疫性血小板減少症(ITP)の新たな治療薬「ウェイリズ錠(一般名:リルザブルチニブ、以下ウェイリズ)」の国内製造販売承認に伴うプレスセミナーを開催しました。

同セミナーでは、大阪大学医学部附属病院 輸血・細胞療法部 病院教授の加藤恒先生が、ITPの病態や従来の治療における課題、そしてITP治療における初のBTK阻害剤であるウェイリズの特徴と臨床試験の結果について解説。さらに、ITPの患者さんへのインタビュー動画が放映され、難病とともに生きる当事者が直面する日常生活の負担や、治療との向き合い方についてのメッセージが共有されました。

血小板が減少する「免疫性血小板減少症(ITP)」の実態

免疫性血小板減少症(ITP)は、免疫システムの異常によって血液中の「血小板」が通常より減少する(血小板数10万/μL未満と定義)自己免疫疾患であり、国の指定難病でもあります。出血時に血を止めるためにはたらく血小板が減少することで、皮膚の紫斑(青あざ)や、鼻や歯肉からの出血、さらに重症例では脳出血などの重篤な出血リスクが高まります。 成人のITPでは、20~40代の女性と、60代以降の高齢者(男女差はみられない)という2つの発症ピークが存在するのも特徴です。

加藤先生は現在のITP治療の目標について、「血小板数を正常に戻すこと」ではなく、「脳出血などの重大な出血を防ぐために必要な血小板数(大体3万/μL以上)を、治療の副作用を抑えてQOLを保ちながら維持すること」と説明しました。

従来の一次治療では副腎皮質ステロイドが標準とされてきましたが、骨粗鬆症や糖尿病、不眠などの深刻な副作用を伴うため長期継続は難しいのが現状です。ステロイドを減量・中止すると多くが再燃するため、薬を完全に離脱できる患者さんは10〜25%程にとどまることも共有されました。

また、国内の保険データベース解析結果から、2022年までは一次治療のステロイドと二次治療以降のTPO受容体作動薬(TPO-RA)の2大治療薬が、日常臨床の大部分を占めていたことが示されました。しかし、これらの治療によって目標値である血小板数3万/μL以上を維持できている患者さんであっても、依然として解決できない大きな臨床課題が存在していたといいます。それが、近年の患者アンケート調査(I-WIShおよびI-WISh 2.0)などで浮き彫りになった、「日常的な倦怠感、強い疲労感、不安感」といった深刻なQOL(生活の質)の低下です。

近年の研究により、ITP患者さんの体内は、制御性T細胞の低下や自然免疫システム「NLRP3インフラマソーム」の過剰活性化に伴う「微細な慢性炎症状態」にあることが分かってきました。この持続的な慢性炎症(炎症性サイトカインの放出)が、血小板の数値とは独立して、病的な倦怠感や疲労感を引き起こす原因と考えられています。

加藤恒先生(提供写真)
加藤恒先生(提供写真)

多面的な免疫調整作用を持つ「ウェイリズ」への期待

ITP治療における初のBTK阻害剤である「ウェイリズ」は、標的をピンポイントかつ可逆的に阻害することで、自己抗体産生の抑制やマクロファージによる血小板破壊の阻止、さらに自然免疫に関わる炎症シグナルにも作用する「多面的な免疫調節作用」を持ちます。通常は1日2回、食後に服用するため、患者さんのライフスタイルを妨げにくい点も大きなメリットだと考えられます。

国際共同第Ⅲ相検証試験(LUNA 3試験)では、難治性の慢性ITP患者において主要評価項目である「持続的な血小板反応」を統計学的に有意に達成(ウェイリズ群23.3% vs プラセボ群0%)。投与開始から12週間における血小板反応の達成割合は、ウェイリズ群で63.9%に達しました(プラセボ群31.9%)。また、長期継続投与によって、副腎皮質ステロイドを50%超減量できた患者が47.1%、TPO-RAを減量・中止できた患者が55.6%に達し、他剤の併用負担を軽減できる可能性が示されました。

副次評価項目である出血や身体的な倦怠感の指標などでも改善が認められています。さらに、持続的な血小板反応を達成しなかった患者群でも、身体的な倦怠感の改善がみられたといいます。

加藤先生は「血小板の数を改善することはもちろんですが、患者さんのQOLをより改善することができるのではないかと期待しています」とウェイリズがもたらす新たな可能性を語りました。

先の見えない不安、副作用の辛さを乗り越えて――患者さんが語る課題と希望

セミナー後半では、24歳でITPと診断された田中明子さん(仮名)のインタビュー動画が上映されました。診断時には自覚症状がなかったという彼女は、指定難病であることや「長く付き合っていく病気」であることを告げられた際、先の見えない不安とショックで目の前が暗くなる思いだったと振り返ります。

治療開始後は、毎日服薬する精神的負担に加え、血小板数が下がるたび増量されるステロイド治療の副作用(全身のだるさ、筋肉の痛み)に苦しめられました。特に過酷だったのは妊娠中の期間で、それまでよく効いていたはずの薬が突然効かなくなり、治療を切り替えることに。血小板数を維持するために、点滴治療を目的とした入退院を何度も繰り返し、身体的にも精神的にも大きな負担が重なったといいます。

それでも発症から10~15年が経ち、病気を徐々に受け入れ、周囲の協力を得ながら仕事を継続してきた歩みを経て、同じような不安を抱える患者さんへ向けて「主治医の先生としっかり話をして、自分に合った治療でうまくコントロールできれば、仕事や結婚、妊娠・出産といった大切なライフイベントを必要以上に怖がったり、諦めたりする必要はありません。自分の希望や目標を主治医の先生にしっかりと伝えて治療を進めることで、諦めずに済む方法は見つかると思います」とエールを送りました。

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