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脆弱X随伴振戦/失調症候群の発症メカニズムおよび治療薬候補の同定

熊本大学をはじめとする研究グループは、遺伝性の神経疾患「脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)」について、神経に異常が生じるメカニズムとその治療薬候補を見つけたと発表しました。今回明らかになった発症メカニズム「G4プリオノイド」はアルツハイマー病やパーキンソン病にも共通すると予想されることから、更なる解析が待たれます。

脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)は国の指定難病にも指定されている遺伝性の神経変性疾患です。FMR1遺伝子の異常により中年期以降にパーキンソン病に似た運動障害が現れます。通常45以下であるFMR1遺伝子の一部にある塩基(CGG)の繰り返し配列が、55~200程度と異常に長くなっていることが知られています。FXTASの発症メカニズムはこれまで長年不明でしたが、最近「RNA毒性」と「RAN(Repeat-Associated Non-AUG)翻訳」による2種の神経障害が原因であるとして提唱され始めました。RNA毒性は異常に伸長したCGGの繰り返し部分に様々なタンパク質が集積して障害を引き起こすメカニズムです。RAN翻訳は異常なCGGの繰り返し部分を持つ遺伝子から作られたタンパク質が神経機能を障害するメカニズムです。FXTASでみられる神経障害はこの2つのメカニズムのうち、どちらが主要な原因なのかはわかっていませんでした。

研究グループはRNA翻訳により産生されるタンパク質FMRpolyGに存在するグリシン連続領域に、プリオンのような性質があることに着目して解析したところ、FMRpolyGはCGG99リピートRNAと結合してゲル状の凝集体を形成しました。こうした実験よりFMRpolyGはグリシン連続領域を介して特殊な構造「グアニン四重鎖構造(G4)」と結合し凝集を形成していました。また、FMRpolyGに結合するタンパク質を解析したところ、神経変性疾患の発症に関わることが知られているRNA結合タンパク質群が同定され、さらにFMRpolyGはエクソソームに含まれるタンパク質とも複合体を形成していました。こうして引き起こされる病態発症のメカニズムを研究グループは「G4プリオノイド」としました。過去に研究グループは「5-アミノレブリン酸」により細胞内でG4に結合する性質を持つポルフィリン類ができることを発見していることから、そのひとつ「プロトポルフィリンⅣ」をFMRpolyGとG4RNA凝集体に作用させたところ、凝集体が劇的に縮小しました。実際に疾患モデルマウスに対し5-アミノレブリン酸を投与したところFMRpolyGの発現が抑制され、低下していた神経可塑性や認知機能、運動機能が有意に改善しました。

出典元
熊本大学 プレスリリース

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