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ポリグルタミン病の治療薬候補を同定

異常に伸びた遺伝子から発症する難病

脊髄小脳変性症は小脳などの神経細胞が変性することで、歩行時のふらつきなどの小脳障害症状がみられる進行性の疾患です。国内の患者数は約3万人程度と考えられています。脊髄小脳変性症の一種である脊髄小脳失調症などは、原因遺伝子のなかにあるCAG配列(グルタミンをコード)がの繰り返しが異常に長いことが知られています。ポリグルタミン鎖(ポリはたくさんの意)の異常伸長により、タンパク質自身の構造が不安定になり、異常な形に折りたたまれたタンパク質がたくさん作られることでこれらの異常タンパク質が凝集、蓄積し、神経細胞の中に封入体と呼ばれる沈着物を形成します。

異常な形に折りたたまれたタンパク質は神経毒性を持つので、神経細胞の機能が低下し、最終的には細胞死を引き起こします。これまでにも異常伸長したポリグルタミンタンパク質の凝集を標的にした凝集抑制作用のある治療薬候補がいくつか見つけられてきましたが、人体への安全性が低かったり、脳まで届きにくかったりという理由から治療法の開発には繋がりませんでした。

L-アルギニンによる症状抑制効果

本研究グループは、L-アルギニンが試験管内で異常伸長したポリグルタミン鎖の異常な折りたたみおよび凝集体の形成を抑制することを発見しました。そこで、脊髄小脳失調症3型のモデルショウジョウバエにL-アルギニンを投与したところ、複眼変性が抑制されました。さらに脊髄小脳失調症1型のモデルマウスにL-アルギニンを投与すると、運動障害がかいぜんされました。この時脳内では、異常ポリグルタミンタンパク質の封入体の数が減少し小脳の神経変性が抑制されていることも明らかになりました。

臨床試験の実施へ

L-アルギニンは生体内にも存在するアミノ酸の一種で、ポリグルタミン病における治療薬として速やかな臨床応用が期待されます。今回の研究結果から、これまで治療方法の少なかったポリグルタミン病に対し、L-アルギニンが進行抑制に有効である可能性が示唆されています。今後は脊髄小脳失調症6型患者を対象に、L-アルギニンの安全性と有効性を確認する医師主導治験の実施が予定されています。

L-アルギニンはサプリメントとして市販されておりますが、本研究で使用しているものとは用法、用量が異なるため、ご自身の判断で服用しないようご注意ください。

出典元
大阪大学大学院医学系研究科・医学部

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