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潰瘍性大腸炎の再生医療を前進させる大腸上皮オルガノイドの新たな培養法を開発

東京科学大学の研究グループは4月27日、順天堂大学と共同で、ヒト大腸上皮幹細胞をオルガノイドとして培養する手法を発展させ、すべての培養因子をGMPグレードのものとした臨床グレードのヒト大腸上皮オルガノイド培養法を開発したと発表しました。さらに、培養因子の中で最も重要とされるWntタンパク質を、新たにWnt活性を有する合成ペプチド製剤PG-008に置き換えた培養法を確立しました。

潰瘍性大腸炎(指定難病97)をはじめとする炎症性腸疾患は、大腸の粘膜に潰瘍などができ、慢性的な炎症が起こる疾患です。近年の治療技術の進歩により炎症を抑えることが可能になってきたものの、難治性の潰瘍が残ることで病状が改善しない症例が存在し、腸の組織再生を促す根本的な治療が求められていました。

研究グループはこれまで、患者さんの腸組織から粘膜上皮再生の起点となるオルガノイドを大量に増やして潰瘍部位に移植する技術を開発してきましたが、実際の臨床で利用するためには、安全管理基準であるGMPグレードの試薬を用いた安定的な培養手法の確立が必要とされていました。

今回の研究では、培養において最も重要とされるタンパク質の代わりに、強力な活性を持つよう新たに合成されたペプチド製剤を導入しました。これにより、すべての培養因子をGMPグレードの安全なものに置き換えた条件下であっても、すべての患者さん由来の検体で安定した培養が可能になりました。さらに、移植治療を想定した30日間の培養においては、100倍以上の高い細胞増殖率が確認されています。

画像はリリースより

さらにこのWnt活性ペプチドによって培養されたオルガノイドにおいて、どのような細胞が培養されているかを明らかにするため、シングルセルRNAシークエンス解析を行った結果、このペプチド製剤によって培養されたオルガノイドでは、腸上皮幹細胞の集団に加えて、腸上皮の傷害再生時に発現する幹細胞の集団も大幅に増加していることが判明しました。大腸幹細胞が拡大し、均一性と純度の高い幹細胞集団が維持されることで、高効率で安定した培養が達成されています。

画像はリリースより

この新しい培養法は、低濃度かつ低コストで安定した効果を発揮します。また、R-Spondin1以外の他の主要な培養タンパク質についてもペプチド製剤への置き換えが可能であることが確認されており、品質規格を満たした製造も容易であることから、オルガノイドを用いた幹細胞再生医療の進展や幹細胞基礎研究の加速につながることが期待されます。

なお、同研究の成果は、「Stem Cell Research & Therapy」誌に3月29日付で掲載されました。

出典
東京科学大学 プレスリリース

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