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11種類の自己免疫疾患の患者さんを対象とした過去最大規模の免疫フェノタイプ解析で層別化、個別化医療への実装に期待

大阪大学と産業医科大学と東京女子医科大学らの共同研究グループは10月31日、約1,000名の自己免疫疾患の患者さんを対象に、46種類の免疫細胞の状態を調べる免疫フェノタイプ解析と、詳細な臨床情報や個人のゲノム情報と統合するオミクス解析を実施し、関節リウマチ、もしくは全身性エリテマトーデスの免疫フェノタイプに近い患者群に大別されることが判明したと発表しました。

自己免疫疾患は、免疫系の機能が正常に働かなくなり、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気です。自己免疫疾患の病態や発症には多彩な免疫細胞の働きが複雑に組み合わさっており、同じ疾患の中でも、複数の異なる病態が混在しています。そのため、画一的な治療法を適用しても、全患者において良好な治療成績が得られないことが課題でした。

今回、研究グループは、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、ANCA関連血管炎、特発性炎症性筋疾患、乾癬、IgG4関連疾患、混合性結合組織病、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、巨細胞性動脈炎の11種類の自己免疫疾患の患者さん約1,000名の血液を対象に過去最大規模の解析を行いました。

画像はリリースより

その結果、自己免疫疾患や免疫細胞が構成するネットワークを明らかにすることに成功しました。さらに、どの免疫細胞がどの自己免疫疾患の発症に関わっているのかを明らかにすることができました。

画像はリリースより

また、患者層別化解析を行い、関節リウマチの免疫フェノタイプに近い患者群と全身性エリテマトーデスの免疫フェノタイプに近い患者群の2群に分類されることが判明しました。一方で、関節リウマチ患者さんの中にも、どちらかというと全身性エリテマトーデスに近い免疫フェノタイプを有する患者さんが少数存在することも明らかになりました。また、このような患者さんでは、特定の免疫細胞の減少や治療反応性の悪さが認められました。

画像はリリースより

さらに、大規模疾患ゲノム解析手法であるゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果に基づき、個人のゲノム情報から疾患発症リスクを定量化するポリジェニックリスクスコア(PRS)を算出し、免疫フェノタイプとの関わりを検討しました。その結果、関節リウマチに合併する間質性肺疾患の病態と樹状細胞の関与が示唆されました。

以上の研究成果より、大阪大学大学院医学系研究科の岡田随象教授は「自己免疫疾患の発症には様々な要因が関わるため、個別の疾患病態に即した患者層別化と最適な医療の提供が必要です。今回、11の自己免疫疾患の1,000名の患者さんの免疫フェノタイプ解析により、免疫細胞の状態や治療反応に関わる患者層別化が可能となったことは、将来的な個別化医療の実装の第一歩と期待されます」と述べています。

なお、同研究の成果は、に英国科学誌「Annals of the Rheumatic Diseases」オンライン版に、10月31日付で掲載されました。

出典
大阪大学大学院医学系研究科・医学部 研究成果

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