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胎児の気管が発生するプロセスを解明

理化学研究所および京都大学をはじめとする研究グループは、呼吸に重要な役割を持つ気管について、胎児の中で発生するプロセスを解明しました。さらにヒトおよびマウスのES細胞から気管組織を培養皿上で作製する方法も開発しました。

背景-気管の発生に重要な遺伝子の探索

我々が呼吸するとき、空気は気管を通り肺へと吸い込まれます。気管は物理的な刺激に耐える強さと、効率的に換気するためのしなやかさを併せ持っており、気管が正常に形成されない先天性疾患では呼吸効率が著しく低下します。気管の形状は胎児のうちに決定されるので、気管の発生過程を理解することは先天性疾患の治療を行ううえでも非常に重要です。マウス胎児の気管形成においては、上皮組織でのNkx2.1遺伝子と間充織でのTbx4遺伝子の発現が重要と考えられていますが、気管の発生には未解明な点も多く残されており詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。

結果と展望-培養皿上で気管の製作に成功

研究グループはマウス胎児の気管形成におけるNkx2.1遺伝子の役割を明らかにするために、Nkx2.1遺伝子を人工的に欠損させたマウス遺伝子改変マウスを作製しました。この遺伝子欠損マウスでは気管間充織のマーカーであるTbx4遺伝子の発現がみられ、気管上皮組織におけるNkx2.1遺伝子の発現は間充織の発生に影響を与えないことを明らかにしました。そこで間充織の発生を誘導する分子候補としてWntシグナルによるシグナル経路に着目しました。実際に、気管上皮組織でWntシグナルを阻害すると間充織でのTbx4遺伝子の発現が消失しました。さらに研究グループは本研究により得られた知見を活用し、ヒトおよびマウスのES細胞をもとに、培養皿で気管組織を作製する技術を確立しました。

出典元
京都大学 研究成果

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