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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新たな病態メカニズムが判明、末梢神経浸潤マクロファージが異常蛋白を除去

九州大学は8月20日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新たな病態メカニズムとして、末梢神経に蓄積する異常蛋白が脊髄の運動神経細胞障害に深く関わり、末梢血由来のマクロファージによる異常蛋白除去が疾患進行に大きく関わっていることを発見したと発表しました。

この研究成果は、同大大学院医学研究院の山﨑亮准教授、大学院医学府博士課程4年の白石渉氏ら研究グループによるもので、医学誌「Scientific Reports」に8月12日付で掲載されました。

国指定の難病であるALSの原因は解明されておらず、現在は根治療法がありません。日本国内の患者数は約9,200人(平成25年度特定疾患医療受給者数)とされています。ALSでは、運動神経だけが脱落し、感覚神経は大きな障害を受けないという謎があり、そのメカニズムが全く不明なため、有効な治療薬が開発されてなかったといいます。

今回、研究グループは、ALSのモデルマウスである「変異SOD1トランスジェニックマウス」の末梢神経を解析し、異常蛋白の蓄積が症状発症のかなり以前から始まっていることに着目。この末梢神経には、末梢血からマクロファージが大量に浸潤していましたが、これらの細胞がどのような働きを持っているのかは不明でした。

研究グループは、これらのマクロファージの浸潤をブロックするために、「細胞遊走因子受容体(CCR2)遺伝子欠損マウス」とALSモデルマウスとを交配し、通常のALSモデルマウスと比較。その結果、CCR2遺伝子欠損ALSモデルマウスは、マクロファージの浸潤は抑制された一方、短命であることが判明しました。

そこで、改めて末梢神経に浸潤するマクロファージを解析したところ、このマクロファージは異常蛋白を貪食・除去し、炎症を抑制する方向に活性化していることを初めて解明したといいます。

画像はプレスリリースより

今回の研究成果について、研究グループはプレスリリースにて、「今後、これらのマクロファージ浸潤を促進したり、保護的活性化を促進することができれば、ALSの発症を予防したり、症状の進行を遅らせることができる可能性があります」と述べています。

出典元
九州大学 プレスリリース

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