iPS細胞を用いた多発性嚢胞腎の病態再現に成功
熊本大学発生医学研究所の研究グループは、ヒトのiPS細胞を用いて試験管内で常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD 指定難病 67) の病態を再現できたと発表しました。iPS細胞を活用することで、将来的に患者個々の症状に合わせた研究や治療にも繋がると期待されます。
背景-遺伝性の腎臓疾患
遺伝性の腎疾患である常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD) は腎臓に多数の嚢胞ができる難病で、徐々に進行していきます。日本国内の患者数は約30,000人程度と推定されており、多くの患者は成人後に発症します。進行すると腎不全にも繋がるため治療法の確立が待たれています。ADPKD患者にみられる嚢胞は、集合管から発生するものが主体と言われています。そこで本研究ではiPS細胞を活用して、集合管由来の嚢胞の再現を試みました。
結果-患者由来のiPS細胞から病態の再現に成功
過去の研究より、ヒトiPS細胞から集合管を誘導する手技が報告されています。今回研究グループはこの手法を応用し、ADPKDの嚢胞を増悪させることが知られているフォルスコリン投与により集合管由来の嚢胞を初めて再現出来ました。さらに、ADPKDの原因遺伝子として知られるPKD1遺伝子に変異のある集合管は、バソプレシン投与により嚢胞を形成しました。さらにADPKD患者に由来するiPS細胞からも同様に集合管由来の嚢胞が作成できました。本研究により、iPS細胞から作成した嚢胞が新たな疾患モデルとなり、更なる治療法開発にも繋がることを示唆しています。