東北大が開発した関節リウマチモデルマウス、シェーグレン症候群のモデルとしても有用
東北大学は7月29日、同大で開発された自己免疫疾患「McH-lpr/lpr-RA1(McH/lpr-RA1)マウス」がシェーグレン症候群の動物モデルとして有用であると報告しました。
この報告は同大大学院医工学研究科腫瘍医工学分野の小玉哲也教授の研究グループによるもので、専門誌「Immunology Letters(電子版)」に6月24日付で掲載されました。
指定難病であるシェーグレン症候群は、ドライアイとドライマウスを主徴とする自己免疫疾患で、女性に多く(男女比1:9)、特に閉経後に多く発症します。その発症機構と根本的な治療法は確立されておらず、発症機構の解明と治療法の開発が急務となっています。
McH-lpr/lpr-RA1(McH/lpr-RA1)マウスは、自己免疫性の重篤な関節炎を自然発症する関節リウマチの疾患モデルとして、東北大学病院歯科顎口腔外科の森士朗(もり しろう) 講師らによって樹立された近交系マウスです。今回、小玉教授の研究グループは、森講師、東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの齋藤恵一助教と共同で、McH/lpr-RA1 マウスが新たなシェーグレン症候群の疾患モデルとなると報告しました。
McH/lpr-RA1マウスは、加齢に伴い自己免疫性の唾液腺炎や血管炎を唾液腺組織内で自然に併発します。16 週齢には唾液腺炎も血管炎も重症化し、炎症性細胞が唾液腺組織に広範囲に侵入。既存の唾液腺の構造も破壊されているのが、病理組織的に観察されたそうです。
また、唾液の分泌時にはAquaporin 5(アクアポリン5)というタンパク質が唾液腺の腺細胞に発現し、唾液分泌を促進させますが、このモデルマウスの唾液腺の腺細胞ではAquaporin 5が発現していないか、非常に少量しか発現しておらず、唾液分泌が阻害されていることも示されました。
Aquaporin 5 の発現減少は、シェーグレン症候群の患者の唾液腺においても報告されており、McH/lpr-RA1 マウスの病理組織所見と一致。Aquaporin 5の発現の抑制には、組織破壊を伴う唾液腺の著しい炎症が関与しており、特にその炎症反応の過程で生成される活性酸素が重要な役割を果たしていることが示唆されました。
さらに、これまで唾液腺炎の疾患モデルとして用いられていたMRL/lpr マウスは、腎炎を発症するために短命でしたが、今回の McH/lpr-RA1 マウスでは、腎炎の発症やリンパ節の腫脹を認めず、長命であるという特長があるそうで、長期に渡る治療薬投与の効果を調べる実験などに利用できるといいます。
研究グループはプレスリリースにて、「今回報告した自己免疫疾患モデル McH/lpr-RA1 マウスは、シェーグレン症候群の唾液腺炎と血管炎の発症機構の解明や新たな治療法の開発に利用することができると期待されます。また、本疾患においては唾液腺に発症した血管炎と悪性リンパ腫の発症との関連性が報告されており、血管炎の発症機構を解明することにより、本疾患と悪性リンパ腫との関連性について調べることができると思われます」と述べています。
出典元
東北大学 プレスリリース