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脳内で産生されるヘビ毒類似タンパク質の機能を解明

慶應義塾大学薬学部薬理学講座の研究チームは、脳内で産生されるヘビ毒に似たタンパク質について、新たな作用を発見したことを発表しました。このタンパク質はニコチン性アセチルコリン受容体の機能制御に関与しており、炎症や免疫機能の発症メカニズムの解明にも繋がると期待されています。

背景-免疫細胞に発現するアセチルコリン受容体

アセチルコリンは副交感神経において神経同士の情報伝達を担う物質として知られます。アセチルコリンと結合し情報を伝える受容体として、ムスカリン性アセチルコリン受容体 (nAChR) とニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR) の2種に大別できることが知られています。このうちnAChRはその名の通り、タバコなどに含まれるニコチンと結合しやすい特徴を持ちます。この受容体の働きは記憶学習行動や集中といった高次脳機能にも関与していることが知られています。また、一方、α7と呼ばれる種類のnAChRは免疫細胞にも多く存在することが知られており、感染からの防御や免疫機能にも関わっている可能性が示唆されています。

結果-ヘビ毒類似タンパク質の機能解析

これまでの研究で、人工的にα7nAChRを導入した細胞は実際の生体内の動きとは異なるふるまいを取ることが明らかになっており、詳細な細胞の機能を解析することは困難でした。研究チームは本研究において、α7nAChRの発現を補助するタンパク質NACHO、RIC-3 に着目し、α7nAChRの解析が可能なTARO細胞の作出に成功しました。脳内で作られるLy6SFと呼ばれるグループのタンパク質は、ヘビ毒であるα-ブンガロトキシンに似た構造をとることが知られています。TARO細胞を用いた解析により、Ly6SFは生体内でα7nAChRの細胞外領域に結合して、α7nAChRの機能を修飾していることが明らかになりました。本研究の結果よりα7nAChR の機能解析への新たな知見が得られました。こうした研究により、炎症や免疫に関わる疾患の更なる病態解明にも繋がると期待されています。

出典元
慶應義塾大学 プレスリリース

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