炎症性腸疾患に対するFUT8を標的とした新たな経口治療薬を開発
大阪大学と兵庫医科大学の研究グループは10月21日、糖タンパク質の糖鎖修飾の一つであるコアフコシル化を触媒する、哺乳類で唯一の酵素「FUT8(Fucosyltransferase8)」に対する新規経口小分子阻害剤を開発したと発表しました。
炎症性腸疾患は、クローン病(指定難病96)や潰瘍性大腸炎(指定難病97)を含む、大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症が起こる原因不明の難治性疾患であり、近年患者数が急増しています。治療にはステロイドや免疫調節薬、注射用のバイオ医薬品などが用いられていますが、高額な医療費や頻回な通院、自己注射による生活上の負担、効果が得られない患者さんの存在が課題となっていました。
今回、研究グループは、糖タンパク質の糖鎖修飾であるコアフコシル化を触媒する酵素「FUT8」に着目し、これを阻害する新規の小分子化合物を開発・評価しました。過剰に活性化したT細胞ではコアフコース化が亢進していますが、本阻害剤をマウスの腸炎モデルに経口投与したところ、T細胞の過剰な活性化や炎症性サイトカインの産生が抑えられ、腸炎が改善することが実証されました。また、健常マウスを用いた実験では、主要臓器への毒性や腸管の粘液層への悪影響は認められませんでした。

以上の研究成果により、高価な抗体医薬品に代わる安価で患者負担の少ない経口治療薬や、従来のバイオ医薬品で効果が見られなかった患者さんに対する新しい治療の選択肢につながることが期待されます。
なお、同研究の成果は、米国科学誌「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」オンライン版に8⽉14⽇付で掲載されました。
