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早期リツキシマブ投与により小児ネフローゼ症候群の長期寛解を誘導

神戸大学は10月10日、難治性に至っていない小児頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群(FRNS/SDNS)の患者さんに対するリツキシマブの有効性・安全性を検証する「多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験」の被験者の長期追跡調査を行ったところ、リツキシマブ群の累積無再発生存率は、プラセボ群に比べて明らかに高いことを見出したと発表しました。

小児ネフローゼ症候群は、尿中に大量のタンパク質が漏れ出し、血液中のタンパク質が極端に少なくなる(低タンパク血症)原因不明の難病で、国の指定難病及び小児慢性特定疾病のひとつです。小児ネフローゼ症候群は、小児の慢性腎疾患の中では最も頻度が高く、日本では年間約1,000人の小児が発症しています。この疾患の80〜90%はステロイド治療で尿タンパクが消失しますが、その半数はステロイドを減量・中止すると頻繁に再発する頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群(FRNS/SDNS)となります。これらの患者さんにはステロイドの副作用を軽減し、再発を抑制するために様々な免疫抑制薬が試みられますが、投与を中止すると大半の患者が比較的速やかに再発することが長年の問題でした。

研究グループは、まだ免疫抑制薬を使用していない比較的早期の段階の難治性に至っていない小児頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群(FRNS/SDNS)患者さんを対象として、Bリンパ球表面抗原CD20に対するモノクローナル抗体であるリツキシマブの有効性を検証する多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(JSKDC10試験)を実施。JSKDC10試験では、リツキシマブ群18名とプラセボ群22名が試験治療を受けました。この被験者の長期追跡調査を行った結果、リツキシマブ群の累積無再発生存率は、投与2年後で44.4%、投与3年後で38.1%となり、プラセボ群(いずれも9.1%)に比して明らかに高いことが見出されました。

画像はリリースより

また、同様のランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を行ったところ、リツキシマブ群の無再発生存率は、コントロール群に比して、投与36ヵ月後までは統計学的有意に高いことが明らかになりました。

画像はリリースより

これまでの研究では、すでに難治性となった小児頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群(FRNS/SDNS)患者さんにリツキシマブを投与しても、末梢血Bリンパ球が回復するに伴い大半の患者さんが再発し、3年以上長期寛解を維持できたのはわずか5.9%でした。しかし、今回の研究結果は、より早期の段階の患者さんに対してリツキシマブを投与することで、末梢血B細胞数が回復した後も、比較的高い頻度で長期寛解を呈する可能性が高いことを示しています。

以上の研究成果より、リツキシマブは、従来の免疫抑制薬が抱えていた投与中止後の再発の問題を解決する可能性があり、難治性に至っていない小児頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群(FRNS/SDNS)患者さんに対し、今後、これまで以上に積極的に使用され、長期予後が改善することが期待されるといいます。現在、研究グループは、小児ネフローゼ症候群の治療を根本的に変えうる可能性を持つ、リツキシマブ併用の有効性を検証する新たな臨床試験(JSKDC12試験)を実施中です。

なお、同研究の成果は、国際専門誌「Scientific Reports」オンライン版に10月10日付で掲載されました。

出典
神戸大学 プレスリリース

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