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メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)で頻発する多発性骨髄炎、破骨細胞の過剰な活性化によるものか

広島大学は6月24日、メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)患者さんにおける多発性骨髄炎の発症メカニズムを新たに解明したと発表しました。

この研究は、同大大学院医系科学研究科小児科学教授の岡田賢氏、同大名誉教授の小林正夫氏ら研究グループによるものです。研究成果は、科学誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に6月24日付で公開されました。

メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)は、BCG、非結核性抗酸菌、サルモネラ菌など細胞内寄生菌による感染症を繰り返す、非常に稀な遺伝性の免疫疾患です。

細胞内では寄生菌を排除する際、IFN-γ(インターフェロン-ガンマ)により活性化されたマクロファージなど「食細胞」が重要な役割を果たします。そのためIFN-γの産生や作用が障害された患者さんで、MSMDを発症することがあります。

MSMDの原因として、これまで主にIFN-γの産生や作用に関連した11種類の遺伝子の変異が報告されています。そのなかでも、IFN-γの刺激を受け取る「IFN-γ受容体1(IFN-γR1)」や、IFN-γの刺激を伝達する「STAT1」の異常によって発症するMSMD患者さんでは、多発性骨髄炎を頻発することがわかっていました。しかし、なぜこれらの患者で多発性骨髄炎が頻発するのかは、長い間謎だったそうです。

今回、IFN-γR1異常症やSTAT1異常症のMSMD患者さんの多発性骨髄炎の病巣部組織を詳しく調査したところ、破骨細胞の特異的マーカー「TRAP」で染色される多核細胞の増加を検出。TRAP陽性細胞は破骨細胞を反映するため、多発性骨髄炎の病変部には破骨細胞が多数存在しており、破骨細胞が骨を溶かす作用である「骨吸収」が亢進していると推測されました。

破骨細胞はマクロファージと同じ系統に属する細胞で、IFN-γが破骨細胞の形成や骨吸収を強力に阻害することが知られていました。そのため研究グループは、IFN-γR1異常症やSTAT1異常症では、IFN-γによる破骨細胞の抑制が上手く働かず、感染局所で破骨細胞の増生と骨吸収が過剰に起こると考え、患者と健常者の骨髄細胞から破骨細胞を分化誘導し、IFN-γの影響を調査しました。

その結果、IFN-γによる破骨細胞の分化抑制を試みたところ、健常者では低濃度のIFN-γで抑制された一方で、患者さんでは高濃度のIFN-γが抑制に必要だったといいます。これにより、患者さんではIFN-γによる破骨細胞の分化抑制が障害されていることが明らかになりました。

画像はリリースより

また、研究グループは、IFN-γによる破骨細胞の機能抑制(骨吸収の抑制)の調査を実施。健常者では、低濃度のIFN-γで骨吸収の抑制が可能であったのに対し、患者さんでは、骨吸収の抑制に多量のIFN-γが必要でした。これにより、患者さんではIFN-γによる破骨細胞の骨吸収の抑制が障害されていることが判明。これら一連の結果から、IFN-γR1異常症やSTAT1異常症では、「IFN-γによる破骨細胞の形成や、骨吸収の抑制」が障害され、それにより多発性骨髄炎が頻発する可能性が考えられたとしています。

今回の研究により、IFN-γR1異常症やSTAT1異常症ではIFN-γによる破骨細胞の形成や骨吸収の阻害が不十分であり、それが頻回な多発性骨髄炎の原因となる可能性が示されました。

研究グループは、プレスリリースにて「多発性骨髄炎は、MSMDのみならず自己炎症性疾患などの他の病気でも時に認める病態です。今回の研究をさらに発展させることで、様々な疾患でみられる多発性骨髄炎の病態をあきらかとするとともに、病態に基づく治療法の開発に繋がることが期待されます」と述べています。

出典元
広島大学 研究成果

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