潰瘍性大腸炎の新たな自己抗体を発見
京都大学大学院医学研究科の研究グループは、指定難病である潰瘍性大腸炎の新たな自己抗体を発見したと発表しました。潰瘍性大腸炎患者の約90%でインテグリンαVβ6タンパク質に対する自己抗体が認められたことから、現在は潰瘍性大腸炎の適切な診断に向けてこの自己抗体を測定する検査キットの開発も進められています。
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に潰瘍やびらんができる炎症性の疾患で、頻回の下痢や下血、激しい腹痛などが症状としてみられます。世界的に患者数は増加傾向にあり、特に20代から30代での発症が多く就学や就労への影響も大きいです。診断は臨床症状やカメラ像から総合的に判断されており、さらに根本的な治療法もないのが現状です。緩解と再燃を繰り返すことが多く長期的に治療を続ける必要があるため生活の質(QOL)の低下にも繋がります。一方で、これまでの研究では詳細な発症メカニズムが分からず満足のいく結果は得られていません。
研究グループは潰瘍性大腸炎の発症に自己抗体が関与していると考え、患者血液中に存在する自己抗体の特定を試みました。潰瘍性大腸炎の患者は大腸粘膜の上皮細胞が攻撃される疾患であることから、上皮細胞にみられるタンパク質を標的として自己抗体のスクリーニングを行いました。その結果インテグリンαVβ6タンパク質に対する自己抗体が潰瘍性大腸炎患者の約90%でみられました。この自己抗体はクローン病やその他の炎症性腸疾患患者では認められなかったことから潰瘍性大腸炎の診断にも用いれることが示唆されました。
出典元
京都大学 研究成果