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遺伝性パーキンソン病の治療法解明にも繋がり得る不良ミトコンドリアの処理機構を解明

大阪大学 大学院医学系研究科をはじめとする研究グループは、パーキンソン病(指定難病 6)でみられる機能が不全なミトコンドリアを排除する機構を新たに発見したと報告しました。遺伝性パーキンソン病の発症に関わるParkinタンパク質に異常がありミトコンドリアを分解できない患者ではミトコンドリアの放出が顕著に増加しており、将来的にはミトコンドリア異常を介したパーキンソン病の病態の解明にも繋がると期待されています。

パーキンソン病は手足のふるえや転びやすさなどの運動障害が主にみられる疾患で、多くは50歳以上で発症します。脳内のドパミン神経に変性がみられる神経変性疾患の一つに分類され、国の指定難病にも指定されています。不足するドパミンを補充する治療法が中心ですが、疾患の進行を抑制するなど根本的な治療法はこれまでに開発されていません。パーキンソン病は遺伝性のパーキンソン病と非遺伝性(孤発性)のパーキンソン病に大別されます。遺伝性パーキンソン病では、細胞小器官であるミトコンドリアの分解過程に関わるタンパク質の異常が報告されており、機能不全のまま分解されないミトコンドリアは細胞を障害する原因となります。

そこで本研究グループはこれまで不明とされていた、分解されなかった機能不全のミトコンドリアがどのような挙動を示すかを確認しました。まず培養細胞を用いて蛍光標識したミトコンドリアのライブイメージングを行い、細胞からミトコンドリアが放出されていることを発見しました。このミトコンドリアの放出は、ミトコンドリア呼吸鎖の阻害剤や脱共役剤により増加しました。機能不全ミトコンドリアを分解する過程はミトファジーと呼ばれます。ミトファジーを促進するParkin遺伝子を強制発現したところ細胞からのミトコンドリア放出が抑制され、ノックダウンしたところ放出が促進されました。こうしたミトコンドリアの放出減少はParkin遺伝子に変異のある患者でも確認されたことから、実際にヒトの体内でも起こっていることが示唆されました。今回発見されたような、パーキンソン病と機能不全ミトコンドリアの関連性がさらに明らかになることで新たなバイオマーカーや治療法の開発にも繋がると期待されています。

出典元
大阪大学大学院医学系研究科・医学部

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