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神経線維腫症2型に対する免疫機能を活用した治療法の開発目指す

慶應義塾大学医学部の戸田正博准教授らの研究グループは神経線維腫症2型(NF2)にみられる腫瘍血管内において高レベルで発現している受容体に着目した新たなワクチンの臨床試験結果を公表しました。今回開発が進められているワクチンは細胞傷害性T細胞を活性化することで、腫瘍血管で高発現がみられる血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的として攻撃します。細胞傷害性T細胞は効果が続くことが知られているため、長期的な効果持続が期待されています。

若年層から発症する遺伝性疾患

神経線維腫症2型(NF2)は聴神経をはじめとした複数の神経に腫瘍(神経鞘腫)がみられる遺伝性の疾患です。10歳代など若年での発症が多く、国内の患者数は約800人程度と推定されており、10年生存率は約67%と非常に進行が早いことが知られています。神経に腫瘍ができるため、手術では神経損傷のリスクが伴うので積極的には行われません。放射線治療も効果があることはわかっていますが、多数の病巣に対しては治療効果が低く悪性腫瘍へと転化してしまうこともあります。近年の研究により、NF2患者の神経鞘腫では血管内皮増殖因子(VEGF)-A を高発現していることが明らかになり、VEFGを標的としたベバシズマブも有効であることが示されましたが、ベバシズマブは2週間に1度継続的に投与を続ける必要があります。

ワクチンの開発へ向けた治験の実施状況

本研究グループはNF2の神経鞘腫では腫瘍細胞にVEGFと結合する受容体(VEGFR)が高発現していることに着目し、VEGFRを標的とする腫瘍ペプチドワクチンの開発を目指しました。このワクチンは細胞傷害性T細胞(CTL)がVEGFRを攻撃する性質に着目し 、CTLの活性化を目的に開発を進めているものです。体内で活性化されたCTLの働きは持続することが知られており、長期的な効果も期待されます。研究チームは現在第Ⅰ相/Ⅱ相臨床試験を実施中です。これまでにワクチンを投与した7症例について、ワクチン摂取による重篤な合併症は見られておらず、一部の症例では腫瘍の縮小および聴力の改善がみられました。

出典元
慶應義塾大学プレスリリース

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