コケイン症候群の発症メカニズム解明に期待-DNA損傷を効率よく修復する仕組みが明らかに-
名古屋大学環境医学研究所 発生遺伝分野の研究グループは、たんぱく質が作られる過程でDNAの傷を効率よく修復するためには、RNAを合成する酵素がユビキチンと呼ばれる特定の目印がつく必要があることを明らかにしました。今回の研究の結果は、DNAについた傷を修復するメカニズムに異常が起こるコケイン症候群(指定難病192)の解明に寄与することが期待されます。
生物の遺伝情報はDNAに格納されています。このDNAは紫外線や化学物質、またはDNAを複製する際のミス(エラー)等によって常に少しずつ傷つけられています。こうしたDNAの傷は、「DNA修復機構」により、絶えず正常なDNA配列へと修復されています。こうした修復機構が生まれつき働かないと、奇形や発育異常、早期老化や、遺伝性疾患が発症します。
DNAの情報をもとにたんぱく質を作成する過程でDNAにキズがあると、DNAの情報を正確に読み取ることができずに反応が止まってしまいます。そこで、DNAの傷を速やかに修復するメカニズムがあり、このメカニズムは「転写と共役したDNA修復機構(以下、TCR)」と呼ばれます。TCRは菌類からヒトまで多くの生物で持っているメカニズムなので、生命の維持には非常に重要なメカニズムだと考えられます。
モデルマウスを用いた研究の結果、 2型RNA合成酵素( RNAPⅡ)がユビキチン化修飾ができない細胞では、TCRが開始されませんでした。こういた結果から、傷ついたDNA修復の開始にはRNAPⅡを構成するたんぱく質に目印(ユビキチン化修飾)が必須であり、この反応が阻害されることでコケイン症候群のような症状が現れることが示唆されました。