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【令和元年AMED再生医療公開シンポジウム】「なるほどThe再生医療」パネルディスカッション「PPI(患者・市民参画)と再生医療」

2020年2月5日(金)、東京都(品川区)にて「なるほどThe再生医療」”あなたとつくる、再生医療の今とこれから“ をテーマにAMED再生医療公開シンポジウムが開催され、以下のようにパネルディスカッションが進められました。

モデレーター
神奈川県立保健福祉大学 教授/慶應義塾大学 医学部 訪問教授 八代 嘉美
パネリスト
京都大学 iPS細胞研究所 所長/教授 山中 伸弥
理化学研究所 客員主管研究員 髙橋 政代
再生医療実現プロジェクト プログラムオフィサー/日本再生医療学会 理事 畠 賢一郎
山口大学 国際総合科学部 准教授 東島 仁
立命館大学 衣笠総合研究機構 専門研究員 坂井 めぐみ

【PPI(患者・市民参画)の歴史と今】

八代:市民参画の現状についてご意見やご感想をお願いします。
高橋:もっと皆さんに参画していただきたいと思います。患者会の方の応援も大きく、荷が軽くなります。
八代:次に、実際の現場の視点からPPIの歴史的な背景についてお話いただけますか。
坂井:医療と患者の関係は改善されていて、私はその中でも臨床研究に患者がどうやって関わっていくかということに色々考えてきました。せきずい基金という団体は、臨床試験の計画の段階か患者団体が関与しています。そこで重要視されているのは、生活者としての視点です。その視点を臨床研究で考慮していただけると違ってくるのではと思います。
東島:患者さんに、よりよい臨床研究のあり方について一緒に考えていただくのがPPIです。そうすると研究の社会的・倫理的な妥当性も向上しますし、さらに科学的な妥当性も向上しより良い研究結果につながることが期待できます。
八代:iPS細胞を研究するにあたって、やはり患者さんの声は力強い支えになると考えてよろしいでしょうか?
山中:基礎研究や前臨床研究は目に見える成果が表れないので、研究者はモチベーションを維持するのが大変です。オランダには全国の小児がんが集まる病院があって、そこには研究者もたくさんいて、研究スペースと患者さんがいるスペースが全く一緒です。研究者は患者さんに囲まれて日々研究しているのでものすごくモチベーションが高いですよ。

【再生医療の今】

八代:再生医療への期待は大きいですが、実際研究の中で課題も多く発展途上です。現在の社会状況について具体的にお願いします。
畠:再生医療は多様性があるがゆえに、一律化が難しいです。高橋先生、山中先生は課題を一歩一歩解決されて、既に確立されています。今後のポイントは、まず基盤がかなりできてきているので、パターンごとに臨床応用にどのようにもっていくか、研究者の先生方にもよくご理解いただいて、企業や患者さんも臨床の先生方も基盤を理解していただくというステージです。課題は徐々に解決してきているのでこれからが楽しみな時代です。
八代:日本はこれから再生医療の適切な臨床研究や治験も世界に先んじることになると思います。世界初のiPS細胞を使った臨床研究を行われた髙橋先生から実体験などお話いただけますか。
高橋:なかなか理解されないのが苦しいですね。山中先生が患者さんのための治療づくりというのをとても強調されていましたが、今までは違っていました。治療というのは、薬を売るためにつくられてきました。これまでの治験は、薬が承認されて初めて医師も患者さんも知る様な流れでした。一方で再生医療は作っている途中を全部オープンにして見てもらっています。だから今までとは全く違うし、そこに患者さんたちも入っていただけると、本当に患者さんのための治療の作り方という新しいものができるんじゃないかと期待しています。
八代: 日本における患者さんと医療研究との関係性というのは、他の国と比べていかがですか。
坂井:欧米では1970年代から研究者と患者の関わりがありましが、日本はそれに比べると遅かったですね。医者と患者の関係から考えますと、対等なパートナーとして臨床計画・研究に参画した例は、せきずい基金が先駆的だと思います。
八代:でどうして必然性があるのか東島先生から触れていただきたいと思います。
東島:患者さんのためのよりよい治療や医療機器の開発のためなのですが、その有用性については色々な国で合意されてきて、臨床研究では必須のプロセスとみなされています。日本ではこれからですね。
八代:患者さんと医師との関係性の是正のための一つとして患者主義参画があると思います。日本の再生医療の大きな部分を占めるiPS細胞研究の基盤を構築されている山中先生のご立場から見て、今越えなければならないハードルはどんなものですか。
山中:世界初の試みを日本がやろうとしています。どうしたら患者さんによくできるか、前を見て悩みながらやっている状況です。そのうえで言いますが、正解は誰にもわかりません。本当に大切だと思うのは怖がること、新しいことをやるのに用心することです。こういう対話を通して自分たちも悩んでいるということをわかっていただけたら本当にありがたいことだと思っています。

【あなたとつくる、再生医療のこれから】

八代:今日のテーマを皆さんにも考えてもらうためにどういうことをしていけばいいのかお話していただこうと思います。
東島:患者・市民参画というのは、研究をできるだけ円滑に進めるための仕組みです。再生医療の場合、研究者、患者、市民の皆さん両方にとってより良い形を模索中です。例えば研究者さんに協力していただいて、患者さんや市民のみなさんからご助言をいただくような機会を定期的に開催します。知識がないと参加できないわけではなく、素朴な疑問でもいいので、研究者はそれを真摯に受け止めて一緒に考える場です。参加する人を増やすのが課題ですね。
八代:シンプルなことでも、率直に言ってもらうことが研究者にとって活力となりますよね。
坂井:患者参画がここまで強く求められているからこそ、大層に感じてしまうことがありますが、自分の生活や環境の視点から医学に対しての質問などをぶつける、研究自体を問い直すべきです。良い医療をつくるために患者と医療者がよきパートナー関係を構築できることを望んでいます。
畠:患者・市民参画においては、共通の価値尺度が大切だと思います。
高橋:その通りです。患者会の人から何をしたらいいか聞かれますが、いつも「いてくださるだけでいいんです」と答えます。計画から一緒に入ってほしいですね。
山中:患者さんから学ぶことが大切だと思います。今まで以上に医療者・研究者・患者さんの密な関係が必須です。そういうものを構築できればどこの国にも負けない、どこよりもよい医療と研究開発につながります。
八代:皆様の知恵をお借りして、再生医療研究を着実に皆様に届けられるように、研究者そして国にご支援をいただきながら、努力をしていきます。

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