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POEMS症候群サポートグループ取材記事

2025年3月12日、POEMS症候群サポートグループを運営している方々にお話を聞きに千葉市にある千葉大亥鼻イノベーションプラザを訪問しました。

患者でもありこの疾患の研究者でもあり理事の一人でもある猪野毛先生は、この疾患の研究者で患者会と研究者をつなぐ貴重な一人です。ガイドライン編集委員の先生とこの疾患の診療ガイドラインを2026年度中に完成させることを目指して取り組んでいるそうです。

左から猪野毛朝飛さん、筆者 難病ネットワーク(Nnet)、松尾眞一 理事長、植田省二副理事長

HP:https://poems.jp/

患者会について

2014年6月に病気の仲間と情報交換を行いたいと考え、現在の理事長である松尾眞一さんがFacebook上で患者会グループ作り活動を開始して8月にはホームページを開設と精力的に活動し、現在に至っているそうです。

当時は全国で340人しか同疾患が見つかっておらず、同じ病気の人と繋がり情報交換を行うのに大変苦労をされたそうです(現在の患者数 約400名と推定)。ブログで発信していた患者やその家族が集まって会を創立しました。現在の会員数は約50名で、寛解により退会する人や新たに発症し入会する人がいるため、増減はあまりないそうです。

理事ら数名は、厚生科学審議会疾病対策部会第1回指定難病検討委員会の傍聴に参加するなど積極的に活動し、2015年に厚生労働省指定難病(行政病名:クロウ・深瀬症候群)に認定されました。

千葉大で行っていたレジストリも日本医療研究開発機構(AMED)から研究費をいただき、刷新します。2025年4月から患者さんの登録システムが稼働しました。HPの告知を急いでいるところです。

患者会の目標

治療薬の拡大: POEMS症候群では類縁疾患である骨髄腫の治療で使われているいくつかのお薬が有効であると示唆されています。しかし、患者さんが少ないことから適応外使用を余儀なくされており、全国で受けられる医療に格差が生じております。患者さんの症状に応じて、全国の病院で受けられる治療が増えることを望んでいます。

疾患の認知:毎年、神経学会にブースを出しており、昨年は、日本神経治療学会、日本血液学会、日本末梢神経学会にブースを初出展し、今後も様々な学会にブース出展の幅を広げていく予定だそうです。

患者・患者会の困り事

<患者>
承認されているお薬がサリドマイドの1剤しかなく、なかなか他の薬をつかってもらえないことです。

<患者会>
Zoomで交流会を実施しているが、現場感が伝わりにくいことや、出席者が固定しているので盛り上がりにかけることがあるそうです。

リアルで集まったこともあるが、患者さんが各地に点在しているので、集まっても7〜8名にとどまるそうです。そのため、どのように患者会を盛り上げたら良いのか、常に模索しているそうです。

その他にも、Facebookでの活動のあり方や使いやすいホームページの構築、また、どの団体も同じ悩みがあると思いますが、活動資金に関しても考えなければいけないと仰っていました。

Patient and Public Involvement(PPI)に関して

PPIとは患者や市民が医療研究や医療政策の意思決定に参画することですが、猪野毛先生が主体となって活動を計画しているそうです。

具体的には、レジストリ研究やガイドライン委員を患者会の代表として務めるなどされています。

まとめ

POEMS症候群サポートグループは、世界中の同じ疾患の方々と協力し、この疾患の治療研究が進み、早期発見、早期治療ができるように日々頑張っています。

理事長 松尾眞一・副理事長 植田省二
取材:恒川信一

【疾患について】クロウ・深瀬症候群(指定難病16)

監修:猪野毛 朝飛 先生

疾患概要

1.Polyneuropathy(多発神経炎),Organomegaly(臓器肥大),Endocrinopathy(内分泌以上),M-protein(Mタンパク陽性),Skin changes(皮膚病変)Syndrome(症候群)⇒POEMS
POEMS症候群は、上記の代表的な症状の頭文字を繋げたものです。
2.クロウ・深瀬症候群(Crow-Fukase Syndrome)
3.高月病(Takatsuki Disease)

POEMS症候群は、非常にまれな血液の病気です。

疾患発症のメカニズム

骨髄内で形質細胞※1が異常に増殖します。異常に増殖するとPOEMS症候群や多発性骨髄腫などの病気の原因であると考えでられています。

1.異常に増殖した形質細胞は血管内皮細胞増幅因子(VEGF:サイトカイン※2の一種)の産生を促進します。
2.POEMS症候群では、血中のVEGFレベルが異常に高くなり、VEGFは血管の透過性を高め、浮腫や胸水、腹水などの症状を引き起こします。
3.また、その他の炎症性サイトカインも上昇して末梢神経障害など全身の様々な症状を引き起こしていると考えられています。

※1:形質細胞(Plasma Cell)は、B細胞が成熟して変化した免疫系の細胞であり、主に抗体(免疫グロブリン)を産生する役割を担っています。これらの細胞は、体内に侵入した病原体や異物に対抗するために、特異的な抗体を生成し、免疫応答を助けます。

※2:サイトカインは多様な種類があり、主に免疫系において細胞間のコミュニケーションを担う重要な役割を果たします。これらの分子は、特定の受容体を介して標的細胞に作用し、細胞の増殖、分化、機能の調整を行います。

症状

POEMS症候群の症状は、以下のように進行することが多いです。しかし、症状や進行のはやさは患者さんごとに異なり

1. 初期症状:
多くの患者は、手や足のしびれや脱力感、痛みなどから始まります。これらの症状は、下肢から始まり、徐々に上肢へと広がることが多いです。

2.進行する神経症状:
症状が進行するにつれて、筋力低下や運動機能の障害が悪化し、最終的には歩行困難になることがあります。進行が速いと1年以内に寝たきりになることもあります。

3.臓器腫大:
肝臓や脾臓、リンパ節など腫大が見られ、これに伴い腹部の膨満感や不快感が生じることがあります。臓器腫大は、POEMS症候群の特徴的な症状の一つです。

4.内分泌障害:
糖尿病や甲状腺機能低下症、男性では女性化乳房、女性では月経不順などが現れる方もいます。

5.皮膚変化:
皮膚の色素沈着や体毛の増加(剛毛)、血管腫などの皮膚異常が見られます。

6.浮腫と体液貯留:
手足のむくみや胸水、腹水が見られることがあり、これにより呼吸困難や腹部の不快感が生じることがあります。浮腫は、血管透過性の亢進によって引き起こされます。

早期の診断と治療が重要です。適切な治療を受けられると、10年以上の無再発生存も望めます。

診断

診断には、血液検査によるMタンパクやVEGFの測定が有用ですが、VEGFの検査方法が血清法と血漿法の2種類があります。診断基準では血清法での測定結果で>1000 pg/mLです。

参照URL:https://www.jsnt.gr.jp/img/20241112_vegf.pdf

遺伝

一般的に、POEMS症候群は遺伝性ではないと考えられています。

治療

  1. 自家末梢血幹細胞移植:これは、血液細胞をつくる造血幹細胞というものを取り出し、高用量化学療法で骨髄を壊した後に移植する方法です。長期の寛解を望める一方、重篤な合併症もあるため、移植に適応がある方は限られています。
  2. 免疫調整剤:サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド
  3. プロテアソーム阻害薬:ボルテゾミブ、イキサゾミブ
  4. 抗体医薬品:エロツズマブ、ダラツムマブ
  5. 放射線療法:単一骨病変の治療に用いられる。

※サリドマイド以外は、未承認薬となっていて、使用には医療機関の倫理審査を通過する必要があります。

日常の管理

定期検査:MタンパクやVEGFの測定が再発の基準として有用です。定期的にかかりつけの医療機関を受診し血液検査が必要です。

リハビリについて: POEMS症候群においてリハビリはQOLの改善に効果的です。

合併症の予防:治療中や治療後は免疫機能が低下することがあるため、感染症に対する予防が必要です。

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