重症筋無力症(MG)が日常生活や仕事に及ぼす影響~アルジェニクスがメディアセミナーで調査結果を発表~
アルジェニクスジャパン株式会社は6月21日、メディアセミナーを開催。重症筋無力症(MG)が患者さんの日常生活や仕事に及ぼす影響について調べた「重症筋無力症患者に関する実態・意識調査 2022」の結果を発表しました。同セミナーでは、医療法人同和会神経研究所神経内科千葉の所長で重症筋無力症の専門医である川口直樹先生が「重症筋無力症について」と題した講演を行いました。
周囲からの理解を得にくい重症筋無力症
重症筋無力症は、免疫グロブリンG(IgG)自己抗体が神経と筋肉の間の伝達を妨害することにより、消耗性で生命を脅かす可能性のある筋力低下を引き起こされる稀な慢性自己免疫疾患です。これにより、眼瞼下垂や眼球運動障害、顔面筋の筋力低下などの症状が現れ、最も重症であると呼吸困難に陥る場合もあります。
「重症筋無力症の医療と生活に関するアンケート調査報告書2006」によると、50%以上の患者さんが収入減を経験しており、症状が残っていて働けない患者さんや社会に積極的に参加しにくいと考えている患者さんも多くいるとのこと。川口先生は、重症筋無力症は「見た目には症状が出にくく、周りに理解してもらうことが難しいため、患者さん各々の治療方針を検討し、生活しやすくするために考える必要がある」と語りました。
有職者の約4割「重症筋無力症であることを話しづらい」と回答
「重症筋無力症患者に関する実態・意識調査 2022」では、重症筋無力症の患者会である「一般社団法人全国筋無力症友の会」および「NPO法人筋無力症患者会」協力のもと、重症筋無力症の患者さんで現在病院に通院している方を対象に、オンラインと郵送を併用し、日本全国で452票のデータを集計しました。
調査の結果、重症筋無力症の症状として上位を占めるのは「易疲労性」や「目の症状」であることが判明。また、周囲からは病気と気づかれにくい症状が上位を占めていることがわかりました。こうした背景からか、会社の同僚や上司に病気を理解してもらえず、怠けていると思われやすいため、有職者の約4割が「職場の上司」(35%)や「同僚」(35%)に自分が重症筋無力症であることを話しづらいと回答しています。
この結果に対して、川口先生は「周囲の理解を得られず、怠けていると思われてさまざまな機会が奪われてしまいます。また、筋力の低下により仕事をすることが難しくなり、失職する場合もある」と語るとともに、周囲の理解を得るために、重症筋無力症に関する詳細な資料を準備するべきと主張。「患者のQOL(生活の質)を上げる方法を考えることが今後の課題。この機会に皆さんに(重症筋無力症を)知ってもらうことで患者さんの苦しみも減るのではと考えています」と述べました。
的確な治療で自分のやりたいことを前向きに
最後に、患者さんを代表して筋無力症患者会理事長の恒川礼子さんと全国筋無力症友の会事務局長の北村正樹さんが登壇しました。
恒川さんは、抗体が見つかっていない筋無力症の患者であり、毎日、多くの重症筋無力症の患者さんから相談を受けているそうです。恒川さんは、「病気について、会社に説明をする際に、言ってしまうと自分の立場がなくなってしまうのではないか、離職に追いやられてしまうのではないかという相談が多い。的確な治療を行っている患者さんは自分のやりたいことを前向きにやっている方が多く、東京マラソンを完走した方もいます」と語り、適切な治療を受けることの重要性を語りました。
北村さんは、1990年に重症筋無力症を発症。発症から5年ほど入退院を繰り返し、その後も治療を続けながら全国筋無力症友の会の事務局長を務めています。北村さんは、「易疲労性の症状があり、駅の階段を上る場合、10段くらいで急に重い荷物を背負ったような感じになります。最初は普通にできていることでも、徐々にできなくなっていく。社会が変わることによって、重症筋無力症患者の不利益が軽減されることもあると思います」と、今後に期待を寄せました。