3歳未満の軟骨無形成症の小児患者さんに対する治療薬ボックスゾゴとフェニルケトン尿症(PKU)成人患者さんに対する治療薬パリンジックの良好なデータを発表
米バイオマリン社は3月20日、軟骨無形成症の小児を対象とした「ボックスゾゴ(一般名:ボソリチド)」および他の骨格疾患を対象とした進行中の臨床試験、ならびに成人のフェニルケトン尿症(PKU)を対象とした「パリンジック(一般名:ペグバリアーゼ)」の試験から得られた良好なデータを発表しました。
軟骨無形成症(指定難病276)は、骨の成長に影響を与える遺伝性の疾患であり、低身長や骨格の形成不全を引き起こします。
フェニルケトン尿症(指定難病240、PKU)は、体内でアミノ酸の一種であるフェニルアラニンを分解する酵素の働きが弱い、または欠けている遺伝性の疾患です。治療を行わない場合、血液中のフェニルアラニン濃度が上昇し、重度の知的障害などを引き起こす可能性があります。
C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)アナログであるボックスゾゴは、FGFR3下流のシグナル伝達経路のポジティブレギュレーターとして作用し、軟骨内骨成長を促進する作用があります。現在、米国、日本、オーストラリアにおいて、骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症の小児の成長を促進する適応で承認されており、欧州では、生後4カ月以上の骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症の適応を有し、適切な遺伝子検査により診断されています。
パリンジックは、フェニルアラニンを分解する酵素を補うことで、血中フェニルアラニン濃度を低下させる薬剤です。現在、米国、日本では成人、EU、カナダ、ブラジルでは16歳以上を対象に、既存治療で血中Phe管理が不十分なフェニルケトン尿症(PKU)患者さんの血中Phe値を低下させる目的で承認されています。
今回の発表において、ボックスゾゴは、日本国内における製造販売後使用成績調査のデータに基づき、3歳未満の軟骨無形成症患児63名を最長23.7カ月間追跡した結果、薬剤に関連する有害事象は見られず、高い服薬アドヒアランスが示されました。この調査結果は、ボックスゾゴの良好な安全性プロファイルを裏付けるとともに、臨床試験で確認された治療効果を支持するものです。生後1カ月の乳児を含むデータは、より早期からの治療開始の可能性を示唆しています。
パリンジックのOPAL試験の新たなデータでは、パリンジックによる治療を受けた成人フェニルケトン尿症(PKU)患者さんにおいて、血中フェニルアラニン値の持続的な低下と、健康関連QOL(HRQoL)の改善が示されました。具体的には、平均血中フェニルアラニン値が治療開始時の1029μmol/Lから96週目には293μmol/Lまで低下し、フェニルケトン尿症(PKU)患者さんのQOLを評価する指標であるPKU-QOLとPKU-SSISにおいても改善が見られました。さらに、第3相PRISM臨床試験の二次解析では、パリンジックによる血中フェニルアラニン値の持続的な低下が、注意力と気分の改善にも関連する可能性が示唆されています。
以上の研究成果より、遺伝性疾患である軟骨無形成症とフェニルケトン尿症(PKU)の患者さんにとって、新たな治療の可能性が示されました。フェニルケトン尿症(PKU)のより若い年齢層の患者さんに対する治療選択肢を広げるため、同社は思春期の患者さんを対象とした第3相試験の結果を今年後半に発表する予定としています。
なお、今回のデータは、ロサンゼルスで開催される2025年米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)年次会議で発表されました。