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パーキンソン病だけに現れるRNA発現量の変化を皮脂から特定、新たな検査方法開発に繋がる可能性

順天堂大学と花王株式会社の研究グループは6月28日、パーキンソン病患者さんの皮脂中のRNA(リボ核酸)解析から、パーキンソン病だけに現れるRNA発現量の変化を特定したと発表しました。

パーキンソン病(指定難病6)は、手足・顎の震え、こわばり、動かしづらさなどの運動症状や認知機能低下などを引き起こす神経変性疾患です。神経変性疾患の中では日本では2番目に多い疾患で、高齢化に伴い患者数も増加しています。根治療法が存在しないため、早期に確定診断を行って治療を開始し、症状をコントロールすることが重要ですが、現在は専門的かつ複雑な検査が必要なため、より簡単な検査法が求められています。

順天堂大学と花王は2021年に、皮脂RNAにパーキンソン病罹患の指標となりうる複数のRNAがあることを発見していましたが、パーキンソン病と類縁疾患である多系統萎縮症や進行性核上性麻痺を区別できるのかは明らかになっていませんでした。

今回、研究グループは、健常者104人、パーキンソン病患者さん99人、さらに新たに多系統萎縮症患者さん29人、進行性核上性麻痺患者さん33人(男女同数)を加えた合計265人を対象として、皮脂RNA情報を比較。あぶらとりフィルムで採取した皮脂RNAの発現量を次世代シーケンサーで網羅的に解析し、約3,500種のRNA情報が得られました。

2021年の研究で、パーキンソン病患者さんは健常者に比べてミトコンドリア関連遺伝子を主体としたRNAの発現上昇が見られることを明らかになっていました。今回の解析でも、パーキンソン病患者さんではミトコンドリア関連遺伝子のRNA発現量が上昇しており、前回の再現性を確認しました。

さらに、今回、皮脂RNAにおいては、ミトコンドリア関連遺伝子の中でも、特にミトコンドリア複合体Ⅴに関係するRNAが発現上昇することを新たに発見しました。このパーキンソン病患者さんでの変化は、薬剤投与量や性別の影響を受けないことも確認しています。

また、多系統萎縮症と進行性核上性麻痺の患者さんを比較した結果、パーキンソン病患者さんにだけ、ミトコンドリア関連遺伝子のRNA発現量の上昇が見られました。このことから、ミトコンドリア関連遺伝子のRNA変化はパーキンソン病に特異的であり、皮脂RNAから、これらの関連遺伝子を抽出して指標にすることで、パーキンソン病と類縁疾患を判別できる可能性が考えられます。

以上の研究成果より、ミトコンドリアに関連したRNA変化がパーキンソン病に特異的であることがわかりました。この結果から、皮脂RNAを用いた検査が、非侵襲的かつ簡便なパーキンソン病診断の補助技術となることが期待されるといいます。

順天堂大学はプレスリリースにて、「今後、パーキンソン病の新たな検査方法の開発に向けた検討を進める予定です」と述べています。

なお、同研究の成果は、第65回日本神経学会学術大会にて発表されました。

出典
順天堂大学 プレスリリース

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