全身性エリテマトーデスの発症に関連する新たな機構を解明
大阪大学は1月5日、全身性エリテマトーデスの新たな発症機構を解明したと発表しました。この研究成果は、同大免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所・感染症総合教育研究拠点の荒瀬尚教授らを中心とする京都大学、神戸中央市民病院、理化学研究所からなる研究グループによるもので、米国リウマチ学会雑誌「Arthritis and Rheumatology」に掲載されました。
全身性エリテマトーデス患者さんにおいて抗DNA抗体が産生されます。ヒト白血球抗原(HLA)に関連する解析の結果から、全身性エリテマトーデスの疾患感受性には特定のHLAクラスIIアリル(アレル=対立遺伝子)が関連することが知られていました。しかし、抗DNA抗体産生におけるHLAクラスII分子の機能的な役割は明らかになっていませんでした。
研究グループは、これまでHLAクラスII分子には、ペプチドばかりでなく、ミスフォールド蛋白質が提示され、さまざまな自己免疫疾患における自己抗体の産生に関与することを解明してきました。
今回、遺伝子導入細胞を用いた実験の結果、これまでペプチドのみを提示すると考えられてきたHLAクラスII分子にDNAが提示されることが判明。特に、全身性エリテマトーデスに対して感受性アリルでは、抵抗性アリルに比べて有意にDNAが結合しやすいことが明らかになったといいます。
また、DNAのHLAクラスII分子への結合は、高親和性ペプチドによって阻害されたことから、DNAはHLAクラスII分子のペプチド結合溝に結合していることが判明。さらに、抗DNA抗体をB細胞受容体として発現するレポーター細胞を用いて解析すると、HLAクラスIIに結合したDNAが抗DNA抗体レポーター細胞を活性化することが明らかになりました。
これらの結果から、HLAクラスII分子のペプチド結合部位にDNAが結合し、抗DNA抗体の産生に関わる可能性が初めて明らかになったとしています。