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肺高血圧症(PH)の発症にヘルパーT細胞におけるIL-6シグナルが重要な役割

国立循環器病研究センターは4月16日、肺高血圧症の病態形成において、免疫に関わるT細胞の一種であるヘルパーT細胞におけるインターロイキン-6シグナルが重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表しました。

肺高血圧症(PH)は、心臓から肺へ血液を送る血管である肺動脈に狭窄や閉塞が生じて肺動脈圧が上昇する疾患です。進行性の疾患で、治療が奏功しないと心不全に至ることもあります。肺高血圧症(PH)の発症には、遺伝的素因に加えて、炎症や感染、薬物・化学物質曝露などが重要だと考えられています。

研究グループは以前、炎症の誘導において重要な役割を担う炎症性サイトカインのIL-6に焦点を当てて、低酸素負荷誘発性肺高血圧症(HPH)マウスに対して、IL-6の作用を阻害する抗IL-6受容体抗体を投与すると低酸素負荷誘発性肺高血圧症(HPH)の病態が抑制されることを明らかにしていました。

今回、研究グループは、Cre-loxPシステムを用いて、どの組織、または細胞でのIL-6シグナルを受け取ることが肺高血圧症(PH)の病態形成に関与するかを明らかにするため、肺動脈を構成する血管内皮細胞や血管平滑筋細胞でIL-6受容体を構成する受容体コンポーネントの1つであるgp130を欠損させたマウスを作製。低酸素負荷誘発性肺高血圧症(HPH)の病態を検討しました。

その結果、gp130を血管内皮細胞で欠損するマウスでは有意な変化はみられませんでしたが、平滑筋細胞特異的に遺伝子組み換えを誘導することが知られるCreマウスであるSMMHC-CreERT2とSM22α-Creを用いてgp130を欠損させたマウスでは相反する結果となり、SM22α-Creを用いてgp130を欠損させたマウスでのみ、低酸素負荷誘発性肺高血圧症(HPH)の病態が有意に抑制されました。

画像はリリースより

そこで、レポーターマウス(遺伝子の発現と同調して蛍光タンパク質により細胞が蛍光を発するように遺伝子を改変したマウス)を作製して、SM22α-Creが遺伝子組み換えを誘導する細胞系列を明らかにするために解析を行いました。

その結果、血管平滑筋だけでなく、造血幹細胞を含む血球細胞でもCre依存性の遺伝子組み換えが生じていることが判明。また、既存のデータベースから、gp130はT細胞に多く発現することがわかりました。そこで、CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)でgp130を欠損するマウスを作製してHPH病態を検討すると、肺高血圧症(PH)の病態は有意に抑制されました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、低酸素負荷誘発性肺高血圧症(HPH)の病態形成においてヘルパーT細胞でのIL-6シグナルが重要であることが明らかとなりました。さらに、現在、臨床で使用される肺高血圧症(PH)治療薬(肺血管拡張薬)とIL-6阻害の併用効果を検討したところ、代表的な肺高血圧症(PH)治療薬を単独で投与した場合より、IL-6欠損ラットへ投与した場合に有意なPH病態抑制の効果が観察されました。このことから、重症肺高血圧症(PH)の治療では既存の肺血管拡張薬とIL-6阻害が相加的に作用する可能性が示唆されました。

国立循環器病研究センターはプレスリリースにて、「今後の課題として、IL-6がいつどこで産生されるのか、また、IL-6シグナルを受容したヘルパーT細胞がどのようにPH病態形成に関与するか?のメカニズムを明らかにすることが必要と考えられます。現在、我々はIL-6の下流因子としてヘルパーT細胞から産生されるIL-21に着目して、IL-21阻害によるPHの新規治療法開発を国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもとで研究を進めています」と述べています。

なお、同研究の成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に4月11日付で掲載されました。

出典
国立循環器病研究センター プレスリリース

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