アストラゼネカが全身性エリテマトーデス(SLE)メディアセミナーを開催
2021年12月16日、アストラゼネカ株式会社は、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE 以下、SLE)に関する「全身性エリテマトーデスに対する新しい治療アプローチ」と題したメディアセミナーを開催。産業医科大学医学部 第1内科学講座 教授の田中良哉先生がSLEの病態を解説するとともに、今年11月に発売された新薬への期待を語りました。
SLEは全身に炎症がおこる自己免疫疾患のひとつです。10~30代の比較的若い女性に多い疾患で、さまざまな臓器に影響を与え、症状の現れ方も患者によって異なります。その原因はさまざまと考えられていますが、中でもインターフェロン(IFN)の自己抗体の値が高いことが要因のひとつと言われています。SLEは重症度に限らず、未治療の場合は臓器障害がおこる割合が多くなります。
現在、SLEの治療には非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド、抗マラリア薬などが使用され、治療目的は第一に「寛解」を目指します。そのためには、「インターフェロン(INF)という免疫に関わる物質を抑えることが重要」と、田中先生は言います。
これまでの薬剤開発では、B細胞などの獲得免疫(自己免疫)系に対する研究が行われてきましたが、その結果は厳しいものでした。そこで獲得免疫の元となる自然免疫に注目した研究を行ったところ、自然免疫の作用に関わるⅠ型IFNの伝達を途絶えさせることで、獲得免疫を発動させずに自己免疫による炎症を抑えることが明らかになったそうです。
2021年11月に発売された「サフネロー(一般名:アニフロルマブ(遺伝子組換え)、以下サフネロー)」は、このI型IFNの伝達に作用することで自己免疫による炎症を抑える新たなSLE治療薬だそうです。
講演後の質疑応答では、「今後のSLE治療はサフネローの1剤だけで完結するのか」との質問に対して、田中先生は現在、同剤が製造販売後調査(PMS)*を行っている段階であるため、既存の標準治療と併せて使用している旨を説明。PMSによりサフネローの効果・安全性がさらに確認された場合、徐々にサフネローの1剤だけで治療できる可能性があると、今後の展望を述べました。
*:販売された後に行われる市場調査。治験は症例数と期間に限りがあるため、治験では得ることができなかった副作用等の情報を集めるために行われる。
参考
アストラゼネカ株式会社 プレスリリース
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2021/2021112501.html