脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセンの高用量レジメン、ポジティブな試験結果を発表
米バイオジェン社は9月4日、脊髄性筋萎縮症(SMA)の症状を有する未治療の乳幼児に対するヌシネルセン(製品名:スピンラザ)の高用量レジメンの安全性と有効性を評価する臨床第II/III相DEVOTE試験における、中心的コホート(Part B)のポジティブなトップラインデータを発表しました。
脊髄性筋萎縮症(指定難病3)は、脊髄の前角細胞の変性により、筋萎縮と進行性筋力、低下を特徴とする下位運動ニューロン病です。
本試験でのヌシネルセンの高用量投与レジメンは、承認済みのヌシネルセン投与レジメン(スピンラザ)と比較して、50mgを14日間隔で2回投与する初期投与レジメンと、4ヵ月ごとに28mg投与する高用量の維持療法レジメンで構成されています。本試験は、高用量レジメンの投与を受けた乳幼児の運動機能が、ENDEAR試験参加者のうち事前に規定された同条件のシャム対照群(非治療群)と比較して統計学的に有意な改善を示し、6ヵ月での主要評価項目を達成しました。
3つのパートで構成されているDEVOTE試験には、様々な年齢や異なるタイプの脊髄性筋萎縮症(SMA)を有する145人の参加者を登録しました。中心となるPart Bのコホートは、乳幼児期に脊髄性筋萎縮症(SMA)を発症した未治療の小児(n=75)で構成され、ヌシネルセンの高用量レジメンによる治療群と、既承認の12mgレジメン(4回の負荷投与の後、4カ月ごとの維持投与)による治療群に、2対1の割合で無作為に割り付けられました。Part Bの主要評価項目は、フィラデルフィア子ども病院 神経筋疾患乳幼児テスト(CHOP-INTEND)の6ヵ月後のベースラインからの変化について、ヌシネルセンの高用量レジメンによる治療群と、臨床第III相ENDEAR試験参加者のうち同条件のシャム対照群とを比較しました。なお、ENDEAR試験はスピンラザ12mgの薬事承認の根拠となった2つのピボタル試験の1つです。
高用量コホートは、6ヵ月後のベースラインからのCHOP-INTENDの変化という主要評価項目において、同条件の対照群に対して統計学的に有意な改善を示しました。複数の副次的評価項目では、シャム対照群と比較して高用量レジメンが良好な結果を示し、また主要なバイオマーカーおよび有効性の複数の指標においても、高用量レジメンが現在承認されている12mgの投与レジメンに対して優越な傾向を示しました。高用量レジメンの有害事象は、脊髄性筋萎縮症(SMA)およびヌシネルセンの既知の安全性プロファイルと総じて一貫していました。重篤な有害事象の割合は12mg群(72%;18/25例)と比較して高用量レジメン(60%;30/50例)で、より低くなりました。
バイオジェンで神経筋領域の開発ユニットを率いるステファニー・フラディット薬学博士はプレスリリースにて、「DEVOTE試験の心強いトップライン結果は、既承認の用量と比較して64日後のニューロフィラメント値の減少量が大きいことから示されるように、高用量レジメンがより速く神経変性を抑制することを示唆しています。時間の経過とともに、高用量レジメンはSMAの症状を有する乳幼児に意義のある臨床的ベネフィットをもたらしました。私たちは詳細な結果をSMAコミュニティや規制当局と共有することを楽しみにしています」と述べています。
なお、DEVOTE試験 (NCT04089566) についての情報は clinicaltrials.gov に掲載されています。現在、ヌシネルセンはスピンラザの製品名で販売されており、米国食品医薬品局(FDA)に承認された用量は12 mgです。