ロシュ社、リスジプラムを用いた2試験分の新たなデータを公表
ロシュ社(スイス バーゼル)は6月12日、Ⅱ型またはⅢ型の脊髄性筋萎縮症(SMA 指定難病3)の2~25歳の患者さんを対象にリスジプラムの薬効を評価したSUNFISH試験におけるパート1の2年間の成績をCureSMA学会で発表しました。自然経過でのSMA患者と比較し、リスジプラムの投与によって投与後24カ月時点での運動機能の改善がみられました。生後6カ月~60歳で他のSMA治療薬を用いたことのあるSMA患者を対象に行われたJEWELFISH試験の開始後12カ月時点の結果から、SMAの発症に深く関わるSMNタンパク質のレベルが急激に上昇し、そのまま持続することが明らかになりました。
リスジプラム投与による運動機能の改善
SUNFISH試験は2つのパートから構成される世界的な大規模試験です。計200名を超える患者の参加が予定されています。用量設定パート1では座位を保てない患者、歩行可能な患者、側弯症や関節拘縮等の症状のある患者まで幅広い症状のある約50名が対象です。被験者の起立および歩行から手指の運動まで32項目の運動機能を評価したところ、自然経過した場合の患者の様子と比較して、リスジプラムを投与した患者では試験開始時から大きな改善が見られました。
SUNFISH試験のパート1で多く確認された有害事象は、発熱の他、せきや嘔吐、風邪様症状であり、スジプラム投与によって最もよくみられた重篤な有害事象は肺炎(51例中3例)だったとのことです。これまでに投与中止に至った安全性の所見は認められていません。国内からJEWELFISH試験には参加していません。
筋力が徐々に低下していく遺伝子疾患
SMAは特定の運動神経が障害を受ける神経・筋疾患の一種で、体幹や四肢などの筋が萎縮することで筋力低下を引き起こします。発症時期や重症度によってⅠ~Ⅳ型の4つのタイプに大別されます。特に、生後6ヶ月以内に発症するSMAⅠ型は重症化するとされ、2万人の出生に対し1人が発症すると推定されています。SMAの発症の原因となる遺伝子として運動神経細胞生存遺伝子(SMN遺伝子)であることがわかっています。常染色体劣勢遺伝の遺伝形式をとることが知られており、父親と母親のどちらからも原因遺伝子の変異を受け継いだ場合にSMAを発症します。
出典元
中外製薬 プレスリリース