せきずいせいきんいしゅくしょう脊髄性筋萎縮症spinal muscular atrophy
指定難病3
脊髄性筋萎縮症
ウェルドニッヒ・ホフマン病
デュボビッツ病
クーゲルベルグ・ウェランダー病
実施中の治験/臨床試験
募集状況 | 試験名 | リンク先 | 最終更新日 |
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募集中 | 多施設共同レジストリによる脊髄性筋萎縮症成人例の長期フォローアップ研究 | umin | 2020・11・09 |
募集前 | 脊髄性筋萎縮症の臨床症状把握のためのデータベース構築と解析研究 | umin | 2020・09・05 |
募集中 | 脊髄性筋萎縮症に対する運動機能評価日本語版Revised Upper Limb Moduleの信頼性・妥当性の検討 | umin | 2020・07・27 |
募集中 | ヒト疾患特異的iPS細胞の作製とそれを用いた病態解析に関する研究 | umin | 2020・01・12 |
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病気・治療解説
概要
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)とは、脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞)の病変によって起こる神経原性の筋萎縮症で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と同じ運動ニューロン病の範疇に入る病気です。体幹や四肢の筋力低下、筋萎縮を進行性に示します。小児期に発症するI 型:重症型(別名:ウェルドニッヒ・ホフマンWerdnig-Hoffmann病)、II 型:中間型(別名:デュボビッツDubowitz病)、III 型:軽症型(別名:クーゲルベルグ・ウェランダーKugelberg-Welander病)と、成人期に発症するIV型に分類されます(表1)。主に小児期に発症するSMAは第5染色体に病因遺伝子を持つ劣性遺伝性疾患ですが、成人発症のSMA IV型は遺伝子的に複数の成因の混在が考えられます。
罹患数
乳児期から小児期に発症するSMAの罹患率は10万人あたり1〜2人です。I型は、出生2万人に対して1人前後と言われています。成人発症のIV型は筋萎縮性側索硬化症よりは少ないです。
疫学
男女差はありません。I型は乳児期、II型は乳児期から幼児期、III型は幼児期から小児期、IV型は成人期に発症します。
原因
SMAの原因遺伝子は運動神経細胞生存(survival motor neuron:略してSMN)遺伝子です。第5染色体(5q13という部位)に存在しており、神経細胞アポトーシス抑制蛋白(neuronal apoptosis inhibitory protein:略してNAIP)遺伝子は修飾遺伝子です。SMN遺伝子の近傍には、SMN遺伝子とは5塩基対のみが異なっている遺伝子が存在しています。SMN遺伝子のことはSMN1遺伝子、近傍の遺伝子はSMN2遺伝子と名づけられています。SMN蛋白は細胞の核に存在し、RNA結合蛋白と反応するものです。NAIPは昆虫細胞のアポトーシスを抑制する蛋白質と構造が似ているため、神経細胞のアポトーシスを抑制する蛋白質と考えられています。I、II型の95%にSMN遺伝子欠失が認められ、III型の約半数、IV型の1-2割においてSMN遺伝子変異が認められます。
遺伝
SMN遺伝子変異を示すSMAは常染色体劣性遺伝形式を示します。すなわち、父親由来のSMN遺伝子と母親由来のSMN遺伝子が共に変異を示している場合に、その子はSMAになります。父親由来または母親由来の遺伝子がどちらか1つだけ変異している場合は全く無症状であり、この場合を保因者といいます。保因者は生涯、症状がありません。保因者同士の結婚の場合、お子さんがSMAになる可能性は1/4 (25%)です。I型の保因者の頻度は欧米では60〜80人に1人、II型、III型は76〜111人に1人といわれていますが、日本では欧米より少ないようです。保因者の頻度を100人に1人と仮定すると、保因者同士の結婚は1/100×1/100=1/10,000であり、お子さんがSMAとなる可能性は1/10,000×1/4=1/40,000となります。患者さん本人のお子さんがSMAになる可能性は1×1/100×1/4=1/400、患者さんの兄弟姉妹のお子さんがSMAになる可能性は1/2×1/100×1/4=1/800となり、遺伝病の発生頻度(1-2%)や先天異常症の発生頻度(数%)より低いです。
遺伝に関わる相談は、全国の大学病院に遺伝子医療部門があり、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受け、遺伝子検査も受けることができます。
症状
全ての型で筋力低下と筋萎縮を示し、深部腱反射の減弱・消失が見られます。
I型は生後6か月ごろまでに発症、運動発達が停止し、体幹を動かすこともできません。支えなしに座ることができず、哺乳困難、嚥下困難、誤嚥、呼吸不全を伴います。舌の細かい振えがみられます。人工呼吸器を用いない場合、死亡年齢は平均6〜9カ月、95%は18カ月までに死亡するといわれており、生命を救うためには、多くの例で気管内挿管や気管切開と人工呼吸管理が必要となります。
II型は支えなしに立ったり、歩いたりすることができません。舌の線維束性収縮、手指の振戦がみられます。成長とともに関節拘縮と側弯が著明になります。また、上気道感染に引き続いて、肺炎や無気肺になり、呼吸不全に陥ることがあります。
III型では立ったり歩いたりできていたのに、転びやすい、歩けない、立てないという症状がでてきます。次第に、上肢の挙上も困難になります。発症は幼児期、小児期です。小児期以前の発症では側弯が生じます。
IV型は成人発症です。側弯は見られませんが、発症年齢が遅いほど進行のスピードは緩やかです。下位運動ニューロンのみの障害であり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)が上位ニューロンも障害されるのと比較されます。
治療法
本症では根本治療はいまだ確立していません。わが国でも、また世界的にも治療薬の開発と治験(臨床試験)が始まっています。乳児期に発症するI、II型では、授乳や嚥下が困難なため、経管栄養や胃廔が必要な方がいます。また、呼吸器感染、無気肺を繰り返す方が多く、予後を大きく左右します。鼻マスク人工換気法(NIPPV)は有効と考えられますが、乳児への使用には多くの困難を伴います。呼吸器感染時には、カフマシンの使用や、肺の理学的療法による排痰ドレナージが有効です。また、筋力にあわせた運動訓練、関節拘縮の予防などのリハビリテーションが必要です。III型では歩行可能な状態をなるべく長期に維持できるように、また関節拘縮の予防のためにも、リハビリテーションを行い、装具の使用などを検討します。小児神経医、神経内科医、整形外科医、理学療法士の連携が必要です。
経過
症状は徐々に進行する場合が多いですが、症状が一時期、進行した後、停止するような場合もあります。I、II型では、成長と共に運動機能の獲得の時期もあります。呼吸器感染症にて肺炎、無気肺となると急速に進行したり、人工呼吸管理が必要となる場合があります。
患者さんに知って欲しいこと
I、II型の乳幼児では、咳の力が弱い、呼吸器感染を繰り返す、哺乳や食事摂取で疲労を示す、体重が増えないなどの医療的管理が必要な徴候に注意を払う必要があります。一方で、食欲の良好なII、III型の幼児では、肥満にならない注意も必要です。関節拘縮を防ぐために、座位保持装置や良好な姿勢の管理が必要です。理学療法士に相談をすると良いでしょう。自力での移動が困難な方の生活において車椅子が必要です。上肢筋力も弱いため、電動車椅子を必要とします。II型のお子さんは、3歳になると電動車椅子を動かすことができ、家や外で家族や友達と一緒に活動できるようになります。
※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。