hATTRアミロイドポリニューロパチー治療薬vutrisiran、第3相試験の投与18カ月時点において全ての副次評価項目を達成
米Alnylam Pharmaceuticals社(以下、アルナイラム社)は10月28日、開発中の成人におけるトランスサイレチン型家族性(hATTR)アミロイドポリニューロパチー治療薬であるRNAi治験薬「vutrisiran」が、第3相試験であるHELIOS-A試験の投与18カ月時点において、全ての副次評価項目を達成したと発表しました。
Vutrisiranは、遺伝性ATTR アミロイドーシス(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)および野生型ATTRアミロイドーシスの両方を含むATTRアミロイドーシス治療のために研究開発された皮下注射のRNAi治療薬。同剤は、標的となる特定のメッセンジャーRNAを分解し、野生型および変異型TTRタンパク質が作られる前にその産生を阻害するように設計されています。
Vutrisiranを3カ月に1回、あるいは可能性として6カ月に1回投与することで、TTRアミロイドの蓄積が減少、組織内のTTRアミロイド沈着の除去が促されることが期待され、組織の機能回復につながる可能性があります。米国食品医薬品局や欧州医薬品庁などの保健当局によるvutrisiranの有効性と安全性の評価は、まだ開始されておらず、日本国内でも未承認です。
今回、HELIOS-A試験で達成した副次評価項目の中には、補正神経障害スコア(mNIS+7)に基づくニューロパチー、生活の質(QOL)、歩行速度、栄養状態および全般的障害について、パチシラン(商品名:オンパットロ)の第3相APOLLO試験の外部プラセボ群と比較した、統計学的に有意な改善が含まれていました。最終的な副次評価項目であったvutisiran投与後の血清中トランスサイレチン(TTR)値の減少については、同一試験内のパチシラン群と比較して非劣性を示したそうです。
また、プラセボ群と比較した、バイオマーカーであるNT-proBNP量や特定の心エコー所見、計画されたコホートの大半の患者さんにおけるベースラインからの99mTc-HMDP シンチグラフィーによる探索的評価項目についても改善が認められ、心臓でのアミロイド沈着の改善の可能性が示唆されたといいます。加えて、有望な安全性・忍容性プロファイルも引き続き示されました。
アルナイラム社のトランスサイレチン(TTR)フランチャイズ事業の責任者でバイスプレジデントのRena Denoncourt氏は、プレスリリースにて「今回得られた結果は、今年すでに発表しているvutrisiranの良好なデータを補強するもので、hATTRアミロイドポリニューロパチーの患者さんにおいて早くも投与 9 カ月時点でみられた神経学的障害の減少およびQOLの向上が、投与18カ月時点においても維持されていることを示唆するものでした。また、探索的評価項目および心臓アミロイドの画像診断が仮説を裏付ける結果であったことにも勇気づけられています。私たちは、HELIOS-A試験の投与18カ月時点の全結果を、2022 年初頭の医学学会で発表することを楽しみにしています」と述べています。