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炎症反応を抑制する分子を新たに発見

理化学研究所 (理研) らの共同研究グループは、炎症反応を制御する分子「PDLIM7」を初めて発見したと報告しました。PDLIM7 は過剰な炎症反応を制御するよう働く分子であり、将来的には各種の炎症性疾患や自己免疫疾患の治療法にも貢献すると期待されています。

背景-過剰な免疫反応と炎症性疾患の発症

ヒトは細菌やウイルスなど外敵の侵入から自身の身体を守るために、自己と非自己を見分けて排除するための免疫機能を備えています。免疫細胞のひとつである樹状細胞は、その細胞膜においてセンサーの役割を果たすToll様受容体 (TLR) によって病原体を認識します。樹状細胞による炎症反応には「NF-κB」と呼ばれる転写因子が重要な役割を持つことが知られており、NF-κBはサイトカインなどの炎症性物質の働きを調整します。一方、NF-κBの過剰な活性化により免疫細胞が異常に刺激されると、自己免疫性疾患をはじめとする炎症性疾患を発症することが明らかになっています。本研究グループは過去の実験によりPDLIM2(PDZ and LIM domain protein 2)というタンパク質がNF-κBをユビキチン化し分解することで働きを抑える機能を持つと明らかにしています。あるタンパク質がユビキチンと結合することを「ユビキチン化」と呼び、ユビキチン化されたタンパク質はユビキチンを目印として分解され排除されます。PDLIM2はその名の通りPDZドメインとLIMドメインという特徴的な部位を持っています。これまでにPDZドメインとLIMドメインを持つタンパク質は7つ見つかっていますが、PDLIM2以外のタンパク質がNF-κBを分解できるのか明らかになっていませんでした。

結果-ユビキチン化によりNF-κB分解を促す新規分子を発見

PDZドメインとLIMドメインの2つのドメインを持つタンパク質はPDZ-LIMタンパク質と呼ばれます。過去に見つかっているPDZ-LIMタンパク質がNF-κBをユビキチン化するかを調べたところ、樹状細胞に発現しているPDZ-LIMタンパク質のうちNF-κBをユビキチン化するのはPDLIM2とPDLIM7の2つのみでした。さらにPDLIM7は、PDLIM2と同様にNF-κBをユビキチン化し分解まで導く作用を持っていました。PDLIM7は樹状細胞に存在するNF-κBに対する新しいユビキチンリガーゼとして同定されました。さらに研究グループはPDLIM2とPDLIM7がユビキチンリガーゼとして働く際の相互作用についても調べました。その結果、PDLIM7はNF-κBに結合するだけでなくPDLIM2にも結合してユビキチン化することがわかりました。ユビキチン化されたPDLIM2とNF-κBの複合体は分解が促進されることも示されました。これらの研究結果より、今回新しく見つかったPDLIM7は単独でNF-κBを分解へ誘導するだけでなく、PDLIM2と共同でNF-κBの分解を促進し炎症反応の抑制を制御していることが明らかになりました。NF-κBのような炎症反応に関与する分子を抑制する分子の働きがさらに解明されていくことで、自己免疫疾患の様な炎症性疾患の治療を目指す新規の免疫制御法の開発にも役立つと期待されています。

出典元
理化学研究所 研究成果(プレスリリース)

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