機械学習で設計した人工タンパク質が筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因タンパク質異常凝集を抑制
慶應義塾大学は9月15日、機械学習を利用したタンパク質設計技術により、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連するタンパク質 SOD1の異常凝集を抑える人工タンパク質を開発したと発表しました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS、指定難病2)は、運動を担う神経細胞が徐々に失われる神経変性疾患であり、その原因の一部にはSOD1と呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子の変異が関与しています。正常なSOD1は2つの分子が結合した二量体として安定して存在しますが、変異などにより不安定化すると解離して単量体となります。この単量体SOD1がさらに構造を変え、複数の分子が集まったオリゴマーや線維状のアミロイドへと異常に凝集することが知られています。
今回、研究グループは、近年発展しているde novoタンパク質設計と呼ばれる機械学習技術を用い、凝集しやすい単量体SOD1のみを選択的に認識して結合する人工タンパク質をコンピューター上で多数設計しました。その中から構造の最適化を進め、単量体SOD1により強く結合する人工タンパク質「#313-604」の開発に成功しました。
X線結晶構造解析を行った結果、実際に結合した立体構造はコンピューターによる予測構造と高精度で一致しており、設計通りの相互作用で結合していることが実験的に証明されました。さらに試験管内での検証において、#313-604を加えることでSOD1の異常なオリゴマーやアミロイドの形成が抑制されることが確認されました。
現在は、試験管内での検証段階であり、実際の細胞や生体内で同様の効果を示すかの検証が今後の課題とされています。研究グループは今後、結合力や安定性の向上を図るとともに、細胞内での効果検証や研究ツールとしての活用、さらには他の神経変性疾患への応用展開を目指すとしています。
なお、同研究の成果は、国際学術誌「Communications Chemistry」に掲載されました。
