筋萎縮性側索硬化症(ALS)における認知機能低下に関わる遺伝的要因を発見
新潟大学は5月20日、145例の筋萎縮性側索硬化症(ALS)剖検例を解析し、アルツハイマー病のリスク因子として知られる APOEε4を持つ患者さんでは、TDP-43 病理が認知機能に関わる脳領域にまで認められるタイプが多いことを明らかにしたと発表しました。
筋萎縮性側索硬化症(指定難病2、ALS)は、手足やのど、呼吸に関わる筋肉を動かす神経が徐々に障害される難病ですが、患者さんによっては考える力や行動の変化など認知機能に関わる症状を伴うことがあります。この症状の違いには、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で重要な異常タンパク質であるTDP-43が、主に運動に関わる神経領域にとどまる場合と、前頭葉や側頭葉、海馬など認知機能に関わる脳領域にまで広がる場合があることが関係すると考えられています。
今回、研究グループは、145例の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の剖検例を解析しました。その結果、アルツハイマー病のリスク因子として知られるAPOE ε4を持つ患者さんにおいて、TDP-43の病理が認知機能に関わる広範囲の脳領域にまで認められるタイプが多いことを明らかにしました。具体的には、APOE ε4を持つ患者では65.5%がこのタイプであったのに対し、持たない患者さんでは39.7%でした。さらに、統計解析や機械学習を用いて検討した結果、APOE ε4とTDP-43の病理の関連は、アミロイドβやタウといった異常タンパク質の蓄積を介したものではなく、より直接的な関連である可能性が示されました。
以上の研究成果は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を病理の範囲や遺伝的背景に基づいて、より細かく理解する重要性を示すものです。将来的には複数の情報を組み合わせることで、患者さんごとに早期から認知機能の評価やコミュニケーション支援の準備を検討する手がかりとなる可能性があります。また、病型分類が進むことで、病型に応じた治療法の開発や臨床試験の設計に役立つことも期待されています。
なお、同研究の成果は、「Acta Neuropathologica」オンライン版に5月16日付で掲載されました。
