新生児スクリーニングにより発症前に診断されたムコ多糖症乳児に対する早期臍帯血移植の有効性を確認
国立成育医療研究センターは5月14日、新生児スクリーニングによって発症前に診断されたムコ多糖症の乳児に対して、体への負担が少ない前処置を用いた早期の臍帯血移植を実施し、安全かつ良好な治療成績を達成したと発表しました。

ムコ多糖症(I型およびII型)は、体内の特定の酵素が生まれつき欠損しているために、徐々に脳や全身の臓器に障害が進行する疾患です。臍帯血移植などの造血幹細胞移植は病気の進行を抑える有効な治療法ですが、従来の診断方法は症状が出てから行われるため、治療を開始した時点ですでに中枢神経系への不可逆的なダメージが進行していることが大きな課題となっていました。
今回の研究では、新生児スクリーニングにより無症状の段階で当センターにて診断されたムコ多糖症I型と重症II型の乳児計4名を対象としました。全員に対して生後2ヶ月から点滴による酵素補充療法を開始し、生後7~ヶ月から11ヶ月の段階で、体への負担を軽減する低毒性前処置を用いて臍帯血移植を実施しました。さらに、重症のII型の乳児2名に対しては、移植だけでは中枢神経系の保護が不十分であることが知られているため、頭部から脳室内に直接酵素を注入する脳室酵素補充療法を組み合わせて実施しました。発症前の乳児に対して臍帯血移植とこの脳室への酵素補充療法を組み合わせたのは世界初の報告となります。
その結果、移植後の造血機能の回復は速やかで、重篤な合併症なく全員が生存しています。さらに、移植後の神経発達検査において良好な認知機能が維持されていることも確認されました。月に1回の脳室への酵素補充療法と移植を組み合わせる先制的な治療戦略は、生涯にわたる毎週の点滴治療と比べ、患者さんと家族の治療負担を軽減します。認知機能を維持するとともに、生涯にわたる頻回な点滴通院を減らし、子どもたちの良好な生活の質を保つことができると期待されています。
なお、同研究の成果は、米国医師会雑誌のオープンアクセスジャーナルである「JAMA Network Open」に、米国中部時間5月4日午前10:00に公開されました。
