【米】二次性進行型多発性硬化症(nrSPMS)に対する治療薬としてtolebrutinibをFDAがブレークスルーセラピーに指定
仏サノフィ社は12月13日、米国食品医薬品局(FDA)より、再発を伴わない二次性進行型多発性硬化症(nrSPMS)の成人患者さんの治療薬としてtolebrutinibをブレークスルーセラピーに指定を受けたと発表しました。
多発性硬化症(指定難病13、MS)は、不可逆的な障害が徐々に蓄積するおそれがある免疫介在性の慢性神経変性疾患です。現在の治療法の主な標的は末梢循環中のB細胞とT細胞ですが、障害蓄積への関与が考えられる自然免疫に対しては、現在の治療法ではほとんど対応できません。再発を伴わない二次性進行型多発性硬化症(nrSPMS)は、再発がみられなくなるものの、疲労、認知障害、平衡障害や歩行障害、排尿・排便障害や性機能障害などの障害が徐々に蓄積する疾患です。
tolebrutinibは、脳脊髄液においてBリンパ球と疾患関連ミクログリアに対して作用を発現する濃度に到達することが可能な、開発段階にある経口投与が可能な脳透過性のブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬(BTKi)です。tolebrutinibは現在、臨床開発段階にあり、その安全性および有効性は、いずれの規制当局でも評価されていません。
今回の指定は、第IIIRCULES試験の肯定的な結果に基づいたものです。同試験では、tolebrutinibは6カ月持続する障害進行(CDP)の発現までの時間についてプラセボとの比較で31%の遅延を示し(HR0.69;95%CI0.55-0.88;p=0.0026)、副次評価項目の検討では、障害改善(CDI)がみられた患者さんの割合はプラセボ群では5%、tolebrutinib群で10%でした(HR1.88;95%CI1.10-3.21;p=0.021,名目上のp値)。
また、tolebrutinib群の4.1%、プラセボ群の1.6%に、正常値上限の3倍超の肝酵素上昇が認められました。tolebrutinib群のうち少数の被験者(0.5%)でALTのピーク値が正常値上限の20倍を超える上昇がみられ、いずれも試験薬の投与開始後90日以内に発現していました。肝酵素上昇は、1例を除く全ての患者さんで特に治療を必要とすることなく改善しました。その後モニタリングの頻度を上げ、重篤な肝障害は低減しました。
サノフィ社の中枢神経系領域開発グローバルヘッドのエリック・ヴァルストロム氏はプレスリリースにて、「今回のブレークスルーセラピー指定は、多発性硬化症と共に生きる人々の大きなアンメットニーズである障害進行をtolebrutinibが抑制する可能性を示しています。再発を伴わない二次性進行型多発性硬化症に対しては承認された治療薬がなく、私たちは、FDA が tolebrutinibを本疾患に対する初の医薬品として審査する期間中も、引き続き FDA と連携してまいります」と述べています。