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第9回「小児の在宅医療を考える会」が開催

2021年6月8日、第9回小児の在宅医療を考える会がオンラインで開催されました。今回は「医療的ケア児支援法案」をテーマに、医療的ケア児支援法案の概要やその経緯が語られました。

小児の在宅医療を考える会は「子供たちがより良い医療を受けて充実した生活を過ごせるために」を目的として2018年5月に設立されました。医療従事者と患者さんの自由な交流を目指して活動を続けており、今回が第9回目の実施です。

本項では、当日参加者の皆さんから寄せられたコメントをサマリー形式でご紹介いたします。

衆議院議員 荒井さとしさん

この法案は政府提案であり、予算や法律が伴う法案です。このことから、政府提案に匹敵またはそれ以上の効果があるのではないかと期待しています。今まで医療的ケア児に対して、取り組みに力を入れていた自治体やそうでない自治体がありました。

しかし、今回の法案によって全国一律の規定が定まり、どの場所でも統一して医療的ケア児に対してケアが行われるでのはないかと考えています。

「医療的ケア児の子育てと法案に期待すること」
医療的ケア児支援法の成立を希望する会 錦織央子さん

私自身、5歳の息子と3歳の娘がおり、娘はピエールロバン症候群・慢性肺疾患など複数の疾患を抱えています。気管切開や経管栄養などの様々な医療的ケアを実施した経験もあります。過去に大変な経験も多くありましたが、訪問医療の提供があったからこそ乗り越えられました。

医療的ケア児の子育ての難しさについては、3つの類があると感じました。一つ目は命を守る重圧についてです。娘は2年間で12回の入退院を繰り返し、常に容態を注視する必要がありました。緊張感がある反面、担当医からは「お母さんがきちんとみてくれているからお家に戻すことができます」と嬉しい言葉を頂いたこともありました。

2つ目は動けない生活についてです。小さな子供と同じくらいの大きさの呼吸器をつけて生活しなければならないことから、半径2メートルの範囲で生活をする必要がありました。呼吸器を台に乗せて一緒に動くことはできても限られた距離しか動かせず、常に目が離せません。そんな中でも、周囲の人たちが代わりに買い物に行ってくれたりと生活の手助けをしてくれたお陰で乗り越えることが出来たと思っています。

3つ目は断続的な睡眠です。呼吸器を着けていたころは、ケアをするため夜間6時間の間で3,4回も起きる必要がありました。ケアのためとはいえ娘を起こしてのケアは私自身も心苦しかったです。

医ケア児の親は睡眠や食事といった最低限の欲求を満たすのもままならない状態が続くことがあります。気持ちを保つのが難しかった時もありましたが、やはり周囲の人たちの協力があったかたこそ乗り越えられたのだと感じています。その中でも特に大切だったのは、小児専門の訪問看護ステーションの存在です。専門的なケアをしてくれることはもちろん、親のメンタル面も支えてくれたことでとても心が救われました。ただ、今のステーションが見つかるまでは複数のステーションを経由するなど苦労もありましたが、子どもにとって家族以外で一番長く一緒に過ごす看護師さんだからこそ、より大切な存在だと思います。

時が経つにつれて娘の歩行が進むようになってくると、サポートが必要なのに適切な援助が受けられないという制度の狭間に落ちてしまう状況になりました。「動けて・知的に問題がなく・呼吸器にケアが必要」な状態ではサポートを受けるための条件を満たさないという理由で、預かり先が見つけることができません。こうした“制度の狭間に落ちた状態”の子は多くいます。しかし、法案が進むことで解決する問題もありますが、預け先が増えても解決できない問題を持つ子もいます。子供のケアに関することだけでなく、それを支える両親の就労状況にも目を向けてほしいです。

私がこの活動を続けられているのは、娘を「かわいい」といって支えてくれた方々へ少しでも恩返しをしたいと思ったからです。さらに、その子供の将来の子供が医療的ケアを必要とした時に、よりよい状況になればいいなと考えています。もし何か私に出来ることがあればいつでもお声がけください。

「障害児福祉のNPO職員が体験した医ケア児支援法案策定までの道のり(仮)」
認定NPO法人フローレンス 森下倫朗さん

フローレンス代表理事と新規事業を立ち上げた経験から「障害児保育園ヘレン」を立ち上げました。今回の医ケア児支援法のポイントは、医ケア児の支援に関して法律上で提議し、努力義務だったものを責務を負うことに明文化したことです。具体的には、保育園や学校などの教育機関に看護師を配置することで、保護者によるケアの負担を軽減します。その他にも介護福祉士といった痰吸引などのケアを行うことが出来る人を学校に配置することで、子供の生活環境が変わることにもつながります。また、もう一つの立法目的としては、家族の望まない離職を防止し、社会全体で子育てをサポートするためだと感じています。

障害児保育園ヘレンは2014年9月に開設しました。園の特徴は、医療的ケア児や重心児が終日母子分離で通える保育園であることと、「児童発達支援事業」と「居宅訪問型保育」の異なる制度・仕組みを組み合わせていることです。都内に5園を展開していますが、必要としている人に対してまだ施設が足りていない状態です。

今回の法案があがったという背景には、「制度の狭間に落ちている子をどうにかせねば」という荒井先生のお言葉がありました。それにより、「永田町子ども未来会議」のメンバーがヘレンに来訪し、解決に向けて進んでくれました。しかし、2018年に行われた「障害児福祉報酬改定」ではうまく話しが進まず、医ケア児の環境改善のためには各省庁を束ねる法律が必要だと動きだしました。あと数日(6月11日の参院本会議にて可決予定)で法案が成立が控えていますが、現場も頑張らないとという気持ちでいます。

法案成立後に期待されることは、保育所・学校等での医療的ケア児の受け入れに向けて支援体制が拡充されることです。ヘレンのような施設はまだ足りないことから、地域のばらつきなくどの場所でも受け入れが進むことが大切だと考えています。

今後の課題としては、地方自治体が主体となって進める事業となるため、最終的な判断は自治体に委ねられている点だと思います。ただ、これまでの道のりでは多くの心ある方々のお力で医ケア児の環境は大きく変わろうとしています。みなさんには本当に感謝しています。これからも医ケア児とそのご家族がより良い生活を送れることを願っています。

外部リンク
小児の在宅医療を考える会

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