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スプライス制御による嚢胞性線維症の新しい治療薬候補を発見

京都大学大学院医学研究科の研究グループは嚢胞性線維症(指定難病299)の病態メカニズムを分子レベルで解析し、リン酸化酵素であるCLKの働きを阻害する「CaNDY」を新しい治療薬候補として同定したことを発表しました。

背景-国内に約40例の希少な遺伝子疾患

嚢胞性線維症は遺伝性の疾患で、生まれつき気管支や消化管などの粘膜が粘り気の強い分泌液で詰まりやすくなります。世界的な患者数は7万人以上、国内では40人程度と推定されています。疾患の原因として、塩化物イオンの輸送に関わるCFTR遺伝子が同定されています。CFTR遺伝子に変異が起こると、粘膜での分泌液に含まれるイオン組成が変わるため粘性の高い液が分泌されます。細菌を排除する機能が妨げられるため感染症のリスクも高いです。これまで嚢胞性線維症の根本的治療法は確立されておらず対症療法しかありません。DNAから転写されたRNAは、タンパク質を合成する前の段階でRNAスプライシングと呼ばれる加工を受けます。RNAスプライシングではイントロンと呼ばれる領域が取り除かれ、エキソンと呼ばれる領域だけが残り繋ぎ合わされます。この、スプライシングの過程に異常があると疾患を発症することが明らかになっています。研究グループはこのスプライシング過程のうち、最も発生頻度の高いタイプの異常を解析し、発症メカニズムの解明と治療標的の発見を目指しました。

結果-高効率でスプライシングを正常化する化合物を同定

発症の原因となる遺伝子の周辺領域の配列情報より、スプライシング制御に関わるRNA結合タンパク質であるSRSF(serine/arginine-rich splicing factor)ファミリーが周辺領域に結合することがわかりました。さらにSRSFファミリーの結合がスプライシングの異常に関与していることも明らかになりました。また、リン酸化酵素であるCLKの働きを阻害することでSRSFが機能しなくなり正常にスプライシングが行われました。このことから、CLKの働きを阻害すると考えられる化合物を700種類あまりを調べ、最もスプライシングを正常化する効率の高い物質として「CaNDY」を同定しました。「CaNDY」は嚢胞性線維症の治療薬候補として期待されており、今後は細胞毒性や薬物動態を確認されます。

出典元
京都大学 研究成果

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