1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. パーキンソン病患者さんにおける血液中と脳脊髄液中の尿酸レベルの低下とプリン代謝異常を発見、エネルギー代謝障害との関係示す

パーキンソン病患者さんにおける血液中と脳脊髄液中の尿酸レベルの低下とプリン代謝異常を発見、エネルギー代謝障害との関係示す

藤田医科大学の研究グループは9月10日、パーキンソン病の病態と尿酸およびエネルギー代謝の関係に着目し、パーキンソン病患者さんにおける血清および脳脊髄液中の尿酸レベルの低下と、プリン代謝異常を発見したと発表しました。

パーキンソン病(指定難病6)は、ドパミンを作る中脳の黒質神経細胞の障害により、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)などの症状が現れる進行性の疾患です。

これまで、パーキンソン病では血清尿酸値の低下を高率に認めることが知られていました。尿酸は抗酸化作用を有するため、尿酸の低下は酸化ストレスを高め、結果としてドパミンを作る中脳の黒質神経細胞を喪失させるという可能性が考えられていました。しかし、イノシンという物質を加え、尿酸を上昇させても疾患の進行は抑制できませんでした。なぜ、尿酸は低下するのか、尿酸低下の意義は何か、また尿酸の代謝の上流にあたり、細胞のエネルギー代謝に不可欠な分子のATPを構成する重要な成分であるプリン体の代謝物が、どのようになっているのか、大きな疑問があったといいます。

今回、研究グループは、パーキンソン病患者さんと健康な対照者の血清および脳脊髄液中の尿酸、尿酸の上流にあたるプリン代謝物質であるイノシン、ヒポキサンチン、キサンチンのレベルを比較。その結果、パーキンソン病患者さんの血清と脳脊髄液中の尿酸レベルが低下していることを確認しました。さらに、尿酸の低下は、体重、性別、年齢といった外的要因の影響が大きいことが明らかになりました。これにより、パーキンソン病では、体重、性別、年齢、すなわちエネルギー代謝障害や運動不足などが尿酸の低下と関連している可能性が示唆されたとしています。

また、パーキンソン病患者さんでは、血清中のヒポキサンチン、脳脊髄液中のイノシンとヒポキサンチンのレベルも低下していることが示されました。その意義を考えるため、研究グループは、イノシンおよびヒポキサンチンとATPとの関係を検討しました。

画像はリリースより

ATPは、細胞のエネルギーの燃料として使われた後、ADP→AMP→IMP→イノシン→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸と分解されますが、ヒトと他の動物は異なり、ヒポキサンチンの90%はリサイクルされ、ATPの原料となります。パーキンソン病における血清や脳脊髄液中のヒポキサンチンの低下は、エネルギーを作る仕組みがうまく働いていない可能性を示唆し、脳脊髄液中のイノシンの低下は、中枢におけるプリン体の低下を意味する可能性があるといいます。これらの結果は、パーキンソン病においてエネルギー産生に重要なプリン体の再利用システムに障害があることを示唆しているそうです。

以上の研究成果は、パーキンソン病におけるエネルギー代謝の理解を深め、新たな治療法の開発に貢献する可能性に繋がることが期待されるといいます。

研究グループはプレスリリースにて、「プリン体の再利用を促進する治療法の開発や、運動療法および栄養管理によってエネルギー代謝を改善するアプローチを通じてパーキンソン病の進行を抑え、生活の質を大幅に向上させる戦略の開発につなげていきたいと考えています」と述べています。

なお、同研究の成果は、米国学術ジャーナル「npj Parkinson’s Disease」オンライン版に9月9日付で掲載されました。

出典
藤田医科大学 プレスリリース

関連記事