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心臓サルコイドーシス患者さんにおける左室駆出率の軽度低下と致死性心室性不整脈と関連性を解明

順天堂大学は3月13日、心臓サルコイドーシスの世界最大規模の多施設レジストリデータであるILLUMINATE-CSを用いて、左室駆出率の軽度の低下と致死性心室性不整脈との関連を明らかにしたと発表しました。

サルコイドーシスは、臓器に原因不明の炎症が起こり、非乾酪性肉芽腫と呼ばれる炎症の塊を1つ以上の臓器につくる疾患です。非乾酪性肉芽腫が心臓に見られた場合、心臓サルコイドーシスと呼ばれ、命に関わる重篤な致死性心室性不整脈や心不全、さらには突然死を起こす可能性があると言われています。心臓サルコイドーシスの患者さんは、致死性心室性不整脈のリスクが高いことが知られていますが、一方で致死性心室性不整脈のリスク因子についての研究は十分ではなく、左室駆出率の軽度の低下と致死性心室性不整脈との関連性は明らかにされていませんでした。

今回、研究グループは、2001年から2017年に、国内33病院において心臓サルコイドーシスと診断された512人のうち、患者登録時に致死性心室性不整脈の既往を認めなかった401人のデータを解析しました。内訳は、左室駆出率35%以下を満たす重度低下群が80人、左室駆出率が男性52%以下・女性54%以下の軽度から中程度低下群が137人、それ以外の正常範囲群が184人でした。

中央値3.2年間追跡した間に、致死性心室性不整脈(突然死、持続性心室頻拍もしくは心室細動の複合)を発生した患者さんは58人でした。さらに、致死性心室性不整脈の累積5年発生率16.8%、10年発生率は23.0%と高値でした。既知の致死性心室性不整脈のリスク因子を調整した後も、左室駆出率の重度低下群だけではなく、軽度から中等度の左室駆出率低下群も左室駆出率正常範囲群と比較して有意に高い致死性心室性不整脈発生率と関係していました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、致死性心室性不整脈のリスクが高い心臓サルコイドーシス患者さんにおいては、軽度から中等度の左室駆出率の低下であっても致死性心室性不整脈の発生と関連していることが明らかになりました。また、今回の研究成果は、心臓サルコイドーシス患者さんの植え込み型除細動器の適応について、国内を含むさまざまな国の心臓サルコイドーシス診療ガイドラインに影響を及ぼす重要な報告と考えられます。

同研究グループは、「心疾患による致死性心室性不整脈を予測し、突然死を予防することは循環器内科の重要な任務の一つです。今回の研究成果が広く周知され、一人でも多くの心臓サルコイドーシス患者さんの突然死が防げれば幸いです」と述べています。

なお、同研究の成果は、『Journal of the American Heart Association』オンライン版に3月8日付で掲載されました。

出典
順天堂大学 プレスリリース

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