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デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する羊膜間葉系間質細胞を活用した新規の抗炎症細胞治療法の有用性が明らかに

東京大学医科学研究所と株式会社カネカ再生・細胞医療研究所は9月26日、羊膜間葉系間質細胞(AMSCs)を用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する抗炎症細胞療法の有用性を明らかにしたと発表しました。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィー遺伝子変異により、ジストロフィンを作ることができないため、筋力が徐々に低下し、重症化すると、呼吸不全や心筋症に至る重篤な遺伝性疾患です。ジストロフィン回復を目的とした遺伝子治療などの根本治療が有望とされる一方、骨格筋組織における慢性炎症に対しては、ステロイドによる対症療法がおこなわれます、しかし、効果の個人差が大きいことや、長期服用による副作用の懸念があることから、慢性炎症を標的とする新たな治療法の開発が望まれます。

今回、研究グループは、モデルマウスを用いて、幼若期のmdxマウスへヒト由来AMSCs(hAMSCs)を週1回、4度、尾静脈内投与し、炎症制御や運動機能における治療効果を検証しました。

その結果、投与したマウスの前脛骨筋の病理像は、未治療のマウスと比較して、細胞浸潤領域が限定的で筋線維間の間隙が狭く、軽症の傾向を示しました。 また、未治療マウスで認められるような広範囲なマクロファージの浸潤は、治療マウスでは認められず、多くが抗炎症性M2マクロファージであることが分かりました。さらに、治療マウスでは炎症による筋線維の壊死に続き再生した中心核線維の割合が減少したことから、hAMSCsによる炎症制御とその後の筋線維壊死の抑制効果が明らかとなりました。

さらに、治療マウスはhAMSCs投与4週後から40週以上経過しても握力が維持されており、長期にわたる運動機能の維持効果を示しました。次に、自発運動量を測定したところ、治療マウスの走行速度は未治療マウスと同じ程度でしたが、1日あたりの走行距離と夜間の活動量が増加しており、走行の持久力が有意に改善していることが明らかになりました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、研究グループは、hAMSCsを投与したデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)マウスにおいて、病態緩和、炎症の鎮静化、運動機能の治療効果を立証しました。組織含有細胞数が非常に多いため、同一ロットからの採取・拡大培養が容易なhAMSCsを利用することで、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)病態進行を遅延させる新たな細胞治療法の開発が期待できるといいます。

なお、同研究の成果は、国際科学誌「Stem Cell Research&Therapy」に、4月27日付で掲載されました。また、同研究を基盤としたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する新たな抗炎症細胞療法として、企業治験が行われています。

出典
東京大学医科学研究所  プレスリリース

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